推し事vs誕生日ーsgiー ページ18
私も彼も、ヲタクだ。
推しがいて、推し事をするのが楽しい。
その気持ちは分かる。その辺に関してはお互い様だと認識している……が。
「今日は私の誕生日だっての!!!!!」
ガンッと机を叩くと、正面に座るこうちゃんが苦笑した。
「落ち着けって。須貝さんだって忘れてるわけじゃないよ……多分。」
「忘れてるんだよ!そうじゃなきゃ彼女の誕生日にライブ行かないでしょ〜!!」
私は流石に須貝さんの誕生日を優先する。
実際、優先したことある。
「ほら、これ食べろよ。好きだろ?」
こうちゃんが届いた料理を私の前に差し出す。
私はそれを食べながらお酒で涙腺が緩んでいくのを感じる。
「泣くなよ〜。」
「だって、須貝さん、私より推しの方が大事なんだもん……うぅ……。」
分かってる。
私はこうちゃんと同い年。
須貝さんの妹よりも年下で、彼女と言うより妹という感じが強いのかもしれない。
「大丈夫だって。」
愚図る私をこうちゃんが宥める。
こうちゃんの彼女の話も聞きつつ飲んでいると、いつの間にか須貝さんの参戦したライブも終わっている時間だった。
ブーッ、ブーッ、ブーッーー
「あ、電話。」
須貝さんからの電話。
きっと推し事の報告とかなのかなぁ。
出たくないなあ。
なんて考えてしまう。
「A?出ないの?」
「こうちゃん出て……。」
「なんで俺なの。」
「いいから!」
電話をとってこうちゃんの耳に押し付ける。
『A!?』
須貝さんが私の名前を呼ぶのが遠くても聞こえる。
こうちゃんは戸惑いながらもそれに答えてくれる。
「あ、須貝さん、お疲れ様です。」
『え、こうちゃん?Aは?』
どうするの!と目線で訴えてくるから、居ないって言ってと口パクする。
「あ、えっと、今トイレに行ってて……かけ直すように伝えておきますか?」
『いや、いいよ。』
やっぱり。
ただ誰かにライブの熱をぶつけたいだけなんだ。
ちょっと悲しくなったところに、須貝さんの声が聞こえてきた。
『代わりに、すぐに帰ってくるよう言って。今日A、誕生日なんだよね。』
こうちゃんはいたずらっぽく笑った。
ほら、大丈夫って言ったじゃん。
そんなことを言ってきそうな彼を睨む。
「分かりました。言っておきますね。」
『うん、じゃあよろしく。』
「はい。」
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辰海恋歌(プロフ) - あすさん» 早速読んでいただきありがとうございます。この後どうなるかも一応考えてはいますが、次回の短編集のテーマとは少し合わないと思うのですぐに公開、という訳ではありませんが、必ずあす様の目に留まる形に致しますのでしばらくお待ちください。よろしくお願いします。 (2021年11月5日 0時) (レス) id: e014f887e2 (このIDを非表示/違反報告)
あす(プロフ) - 辰海恋歌さん» 早速続き拝見しました!fkrさんが詰め寄る感じいいですね!続編?半年後fkrさんとどうなっているのか気になります! (2021年11月4日 22時) (レス) id: 14b7e1c0b8 (このIDを非表示/違反報告)
辰海恋歌(プロフ) - あすさん» こんばんは!そういって頂けてとても嬉しいです!最後まで気に入って頂けますと幸いです。 (2021年11月4日 20時) (レス) id: e014f887e2 (このIDを非表示/違反報告)
あす(プロフ) - こんばんは!結ばれる悲劇、終わらない悲劇を読んで切なくもありますがとても気に入りました!続きが気になります… (2021年11月3日 22時) (レス) id: 14b7e1c0b8 (このIDを非表示/違反報告)
辰海恋歌(プロフ) - あすさん» いえいえ!気に入っていただけて良かったです!! (2021年7月17日 23時) (レス) id: e014f887e2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:辰海恋歌 | 作成日時:2021年5月19日 16時