____(リクエスト) ページ15
次の日、普段通りに出勤したが、Aさんはいなかった。
昨日の今日なのでさすがに心配になり、俺は志賀に声をかけることにした。
「ねぇ、今日Aさんは?」
「え?あぁ……。」
志賀は俺がAさんのことを話題に出したことに少しだけ驚いて、悲しそうに目を伏せた。
「今日、Aさんはお葬式でお休みです。」
お葬式。しかも平日に仕事を休んでとなると、彼女に近しい人なのだろう。
「そ、か。分かった。」
俺はそれだけようやく絞り出すと、自分の席に戻って仕事を再開させた。
そうしなければ、余計な考えばかり浮かんできそうだったから。
その日の午後、昼休憩から戻ってくるとAさんが普通に仕事をしていた。
俺は驚きで思わず立ち止まってしまった。
「ちょ、伊沢急に止まらないでよ。」
俺の後から入ってこようとしていた福良さんに注意されて思考を戻す。
なんで?Aさん、今日はお葬式だったんだよね?
「福良さん、Aさんって今日半休だったんですか?」
「え?あ、うん。なんでも急に友人の結婚式に呼ばれたけど、そんなに親しいわけじゃないから披露宴までは出る気ないってことで、半休でいいって言われた。有給溜まってるから使ってって言ったんだけど、それはまた今度まとめてって言われてね。」
「なるほど……。」
志賀と福良さん、双方に違った理由を伝えたのか。
っていうか、福良さんの話も有り得なくはないって思えるから困る。
その日は過干渉だと言われようがどうしようが、声をかけようと思って彼女の動向を注視して残りの時間を過ごした。
定時をすぎて彼女が帰り支度を始めたところで俺もさっさか帰る準備をする。
今日やるべきことは終わったし、もしもの時は福良さんいるし。
「お疲れ様でした〜。」
Aさんが出ていって、俺も追いかけるように玄関に向かう。
「福良さん、あとお願いします。」
「分かった。もしなんかあったら容赦なく連絡するからね。」
「福良さんなら大丈夫だって信じてるんで。お疲れ様でした!」
福良さんに向かって軽く手を挙げて足を進める。
ふと、志賀と目が合った。
あいつは俺の方を悲しげな顔で見ながら、静かに頭を下げた。
下に降りてAさんを探す。
見つけた彼女は少し遠くだが、走ればすぐに追いつくだろう。
俺は彼女に駆け寄り、声をかけた。
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辰海恋歌(プロフ) - あすさん» 早速読んでいただきありがとうございます。この後どうなるかも一応考えてはいますが、次回の短編集のテーマとは少し合わないと思うのですぐに公開、という訳ではありませんが、必ずあす様の目に留まる形に致しますのでしばらくお待ちください。よろしくお願いします。 (2021年11月5日 0時) (レス) id: e014f887e2 (このIDを非表示/違反報告)
あす(プロフ) - 辰海恋歌さん» 早速続き拝見しました!fkrさんが詰め寄る感じいいですね!続編?半年後fkrさんとどうなっているのか気になります! (2021年11月4日 22時) (レス) id: 14b7e1c0b8 (このIDを非表示/違反報告)
辰海恋歌(プロフ) - あすさん» こんばんは!そういって頂けてとても嬉しいです!最後まで気に入って頂けますと幸いです。 (2021年11月4日 20時) (レス) id: e014f887e2 (このIDを非表示/違反報告)
あす(プロフ) - こんばんは!結ばれる悲劇、終わらない悲劇を読んで切なくもありますがとても気に入りました!続きが気になります… (2021年11月3日 22時) (レス) id: 14b7e1c0b8 (このIDを非表示/違反報告)
辰海恋歌(プロフ) - あすさん» いえいえ!気に入っていただけて良かったです!! (2021年7月17日 23時) (レス) id: e014f887e2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:辰海恋歌 | 作成日時:2021年5月19日 16時