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「寂しいよ。……けど、もう後戻り出来ないし。」
彼女の意味深な言葉に、俺の体は固まる。
「後戻り出来ないって、どういうこと?」
彼女は慌てて手と顔を横に振った。
「ううん!なんでもないよ!気にしないで。」
気にしないで、といいつつ彼女の目は気にしてと訴えかけてる。
幼なじみの観察眼、舐めてもらっては困る。
「気になる。何?」
彼女は困ったように笑った。
「んー、本当になんでもないんだけど……ただ、家を決めちゃったから、ってだけだよ。」
「何かやり残したことある?」
後戻り出来ないってことは、本当は何かしたかったのかな。
なんて思いで聞いたけど、彼女はますます困ったように笑うだけ。
「……Aの引越し祝いに、ホームパーティでもする?」
「やだよ。祥彰も私も、そんなキャラじゃないでしょ。それに、そんなパーティしたら、本当にお別れみたいじゃん。」
彼女は、俺が思ってる以上に引越しするのが
……というか、俺と別れるのが嫌らしかった。
「……じゃあ、ここに残ればいいじゃん。」
俺も、限界だったのかもしれない。
Aから引越しの話を切り出されて、受け止めて心の整理をつけることが出来ず今に至る。
「だから言ったでしょ。もう後戻り出来ないんだって。」
「取り消せばいいじゃん。まだ間に合うでしょ?」
もし間に合わなくったって、関係ない。
どうしてお互い別れたくなんてないのに別れなければいけないんだ。
「うーん……そう、なんだけど。」
口ごもって何も言わない彼女。
俺は子供の頃のように、彼女の両手を俺の両手で包んで、正面から真っ直ぐに見つめた。
これは、俺と彼女が秘密を打ち明ける儀式のようなもの。
片方が、もう片方の両手を包む。
そうすると、何故か安心感に包まれて、話しにくいことも話せるのだ。
それは今も変わらないようで、彼女は少し躊躇ってから話し出してくれた。
「……今までさ、中学まで一緒で、祥彰はずっと祥彰で……恋愛感情を抱くなんて思ってもなかった。」
知っている。
彼女は俺を、ただの幼なじみとしか見ていない。
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辰海恋歌(プロフ) - あすさん» 早速読んでいただきありがとうございます。この後どうなるかも一応考えてはいますが、次回の短編集のテーマとは少し合わないと思うのですぐに公開、という訳ではありませんが、必ずあす様の目に留まる形に致しますのでしばらくお待ちください。よろしくお願いします。 (2021年11月5日 0時) (レス) id: e014f887e2 (このIDを非表示/違反報告)
あす(プロフ) - 辰海恋歌さん» 早速続き拝見しました!fkrさんが詰め寄る感じいいですね!続編?半年後fkrさんとどうなっているのか気になります! (2021年11月4日 22時) (レス) id: 14b7e1c0b8 (このIDを非表示/違反報告)
辰海恋歌(プロフ) - あすさん» こんばんは!そういって頂けてとても嬉しいです!最後まで気に入って頂けますと幸いです。 (2021年11月4日 20時) (レス) id: e014f887e2 (このIDを非表示/違反報告)
あす(プロフ) - こんばんは!結ばれる悲劇、終わらない悲劇を読んで切なくもありますがとても気に入りました!続きが気になります… (2021年11月3日 22時) (レス) id: 14b7e1c0b8 (このIDを非表示/違反報告)
辰海恋歌(プロフ) - あすさん» いえいえ!気に入っていただけて良かったです!! (2021年7月17日 23時) (レス) id: e014f887e2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:辰海恋歌 | 作成日時:2021年5月19日 16時