今日の二人【QK】 (ページ41)

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「ちょっと！時間ギリギリなんでしょ！？そんな新婚ごっこしてる場合じゃないよ！」

一部始終を目撃していたふくらさんから、ズバッとツッコミを入れられてしまった。

し、新婚！？

予想だにしていなかったその言葉と、皆にすべてを見られていたことに羞恥心を覚えた私は一気に顔を赤面させる。

「いいんだよ！こんな時じゃないとAちゃんにネクタイ締めてもらえないんだから！」

とツッコまれた彼は声を荒げて反論していた。

お願いですからそれ以上言わないでください…。

恥ずかしさのあまり穴があったら入りたい私だったが、そんな私に彼はこんなことを告げた。

「新婚みたいだって」

そして嬉しそうに顔を綻ばせる。

その瞬間、私の中で愛しさがブワッと物凄い勢いで込み上げてくるのを感じた。

バッと両手で顔を覆いながらブルブルと身悶える私を余所に、こうちゃんと山本さんが彼の背中をぐいぐいと押しながら早く目的地に行くようにと急かす。

「あー俺がサラリーマンだったら、毎朝Aちゃんにネクタイ結んでもらうのになぁー」

彼らによって玄関へと追いやられた彼は、靴を履きながらそんなことを口にした。

大学2年の頃、彼の夢はサラリーマンだったらしい。

QuizKnockのCEOが板につきすぎて、今では彼のその姿を想像することすらできない。

「伊沢さんがサラリーマンだったら、今頃僕らここにいないよ」

それを受け、ぽつりと山本さんが呟いた。

確かに彼がQuizKnockを作らなければ、私達は今ここにいることはなかったのだろう。

大学が違う山本さんやふくらさんとも、出会うこともなかった。

そう考えれば、一期一会とはまさにこのことで。

私達を出会わせてくれた彼には、感謝の言葉しか見つからない。

しみじみとその奇跡を噛み締めていると、

「もしそうなってたとしても、俺らはどうせクイズプレーヤーやってたんだろうけどな」

と彼はニヤッと不敵に笑いながら彼らに告げるのだった。

それを言われた彼らは、当然とばかりに口元に笑みを湛えていて。

その光景は私にとってあまりに尊いもので、この一瞬を胸に抱きしめてしまいたくなった。

「じゃあ、いってきます」

仕事モードにスイッチを切り替えた彼が、玄関ドアに手をかけた。

いってらっしゃい、と私達はその背中に声をかける。

その後ろ姿に思わずついて行きたくなってしまうのも、彼の持つ魅力の一つなのだろうか。