川上さんと初デートに行く話。4 ページ4
ところが、お付き合い宣言から早数週間が経ったが、特に私達に大きな変化はなかった。
毎日オフィスで記事を書いて、動画の企画を考えて、撮影の手伝いをして。
彼と話すことはあっても、それはほぼ事務的な会話ばかり。
時折こうちゃんや須貝さんから「川上(さん)とどうなん?」と冷やかしを入れられたりもしたが、取り立てて話すようなことは何もなく。
彼が忙しいことは分かっていたので、こちらからあれこれ口を出すのも憚られる。
浮かれているのは私だけで、もしかしたらずっとこのままかもしれないという一抹の不安はあったが、できる限りそれは考えないようにした。
だって、彼と想いを通じ合わせられただけで私にとっては奇跡だったから。
それ以上に何かを望むことはできなかった。
もし望んでしまったら、罰でも当たってしまいそうな気がした。
彼の方を見ると、黙々と誰かの記事を添削する川上さんの姿。
とてもどうでもいい雑談などできるような雰囲気ではない。
時計を見上げると、時刻は夕方の6時を回っていて。
いつもより少し早いが、やることも終わったし今日はもう帰ってしまおうか。
小さなため息をついた私は、すごすごと帰り支度を始める。
PCの電源を落として、手帳やスマホを鞄にしまい。
それを手に取った私は、その場にいた皆に声をかけた。
『すみません、今日はこれで失礼します』
皆からのお疲れ様、という声を背中に浴びながら、私はオフィスを後にした。
トボトボと駅までの道を力無く歩く。
もう日が落ちかけているというのに、外を歩けばじっとりと汗ばむような気温の高さだった。
この数週間、目に見えて彼との関係性が変わることはない。
何かほんの少しのきっかけがあれば。
だが、そのきっかけの作り方すら、恋愛初心者の私には分からなかった。
なかなか2人きりになるタイミングもなく、なんてことない話ができるような状況も作れない。
彼はどう思っているのだろうか。
このまま、以前と変わらないような関係を、望んでいるのだろうか。
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Annie(プロフ) - ひなたさん» ひなたさん、コメントありがとうございます。大事にお読みいただけて、本当に嬉しく思います。出来るだけ現実を忘れられるような、幸せなお話が書きたかったもので…。そう感じていただけて、私の方がお礼を申し上げなければならないくらいです。ありがとうございます。 (2020年7月2日 21時) (レス) id: 8c53967ba8 (このIDを非表示/違反報告)
ひなた(プロフ) - 後書きがある時点で今後は書かれることはないのだろう、と大事に大事に読ませていただきました。私も読みながら泣いちゃいました。このお話のkwkmさんが優しくて、消化出来ない色んな気持ちを大丈夫だよって勝手に言ってもらえたようでした。ありがとうございます。 (2020年7月2日 11時) (レス) id: f0ee8abf5f (このIDを非表示/違反報告)
Annie(プロフ) - ゆうかさん» ゆうかさんお読みくださいましてありがとうございました。温かいコメントをいただけて、本当に書いてよかったと心から思っています。これからも他のメンバーのお話を書いていければと思っていますので、引き続きお付き合いいただけましたら嬉しいです。 (2020年7月1日 12時) (レス) id: 8c53967ba8 (このIDを非表示/違反報告)
Annie(プロフ) - 217さん» リクエストありがとうございました。絶対に今日中に書き上げなければと23:57に滑り込みで公開させていただきました。現実からかけ離れて、楽しんで読んでいただけることを願いながら書きました。宝物と言っていただけて、本当に涙が出るくらい嬉しいです。 (2020年7月1日 12時) (レス) id: 8c53967ba8 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうか(プロフ) - 素敵なお話をありがとうございました…! (2020年7月1日 7時) (レス) id: 41b5f36188 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Annie | 作者ホームページ:https://twitter.com/kmu_annie?s=09
作成日時:2020年6月30日 23時