川上さんと初デートに行く話。

川上さんと初デートに行く話。2 ページ2

オフィスのドアの前で、2〜3回深呼吸を繰り返す私。

分かっている。QuizKnockの人で私たちのことを反対するような人がいないということは。

だが、それでも少しの不安が脳裏をよぎる。
今や編集長の地位にいる彼の恋人として、私が相応しいのかどうかも分からない。
そんな自信はおそらく、今後も持てないかもしれない。

でも、私がずっと彼のことを見てきたのは事実で。
誰かが書いた記事を皆で読んで面白いと笑い合った日や、動画の撮影で皆が考えた奇抜な企画を楽しんだ日。
勿論良い時ばかりではなくて、彼も大学のことやYouTubeでの自分のあり方に悩んでいる日だってあった。

そんな彼のそばにいて、私は何十回何百回も“彼のことを支えたい”と思った。

彼のそばにいられるだけで幸せだったのに、いつしか私はおこがましくもそんなことを考えるようになった。

それがまさか、こんな形で実現する日が来るなんて。

お付き合いをすることになったあの日から、私は自分の中で誓いを立てた。今後、自分がもっと彼に相応しい人間になって、彼のことを支えていくということを。

私は覚悟を決めたように拳を固く握った。
そしてスッとドアノブに手をかけた彼が私に一つ頷いてみせ、私もそれに同意するように頷いた。

勢い良くガチャッと扉を開けた彼は、颯爽と中へと入っていく。

今日は誰がいるのだろうか。
出来れば皆揃っていてくれるとありがたいのだが。

ドキドキしながら作業部屋へ行くと、私の願いが通じたのか本当に全員が揃っていた。
こんなことは、滅多にないというのに。

驚き過ぎて口が開いたままの私。
川上さんも多少なりとも驚いていたようだったが、それでも皆に挨拶をしていた。

「お疲れ様です」

彼がそう言うと、皆は次々に挨拶を返してくれた。
私も呆けるのを辞めてすぐに皆に声をかける。

『お疲れ様です！』

すると、私の存在に気づいたらしい皆が一斉に目を丸くしていた。
そしてその直後、なぜか彼らの口元にはニヤリと笑みが浮かんでいて。

「え、何？一緒に来たの？」

「マジ？仲良しかよ」

すがいざわコンビにニヤニヤとした目で見られ、河村さんからはヒューヒュー、こうちゃんからは拍手、山本さんとふくらさんはニコニコ。

めちゃくちゃ恥ずかしい…！

彼らの反応を見て、私は思わず赤面しながら俯いた。

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