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#146_Gloomy ページ44

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「ただいま」

「おかえりなさい！」

「うん、」

「あ、やっぱり」




仕事を終えて家に帰ると、
俺の顔をマジマジと見てきた彼女のAが
「やっぱり」と呟いた。



言われた方の俺は、なにが “やっぱり” なのか
さっぱり分からない。




「・・・なにが？」

「今日、不機嫌じゃない？」

「不機嫌じゃないよ」

「じゃあご機嫌ナナメ？」

「そうでもない」

「んー、じゃあなんだろ？」

「いや、こっちが聞きたい笑
なんで機嫌悪い前提なの」

「さっき見た生放送で」

「あ、見てくれたんだ」




俺がしてきた仕事というのは歌番組での生歌唱。
生放送に生出演して、3曲をメドレーで歌ってきた。


Aが言うにはその歌番組を見て、
今日は俺の機嫌が良くないと判断したらしい。




別に機嫌は悪くないんだけど、
ただ、まあ、なんていうか、
いつもほどのテンションでもない。


ただそれだけ。




俺としてはいつもどおりに演奏して、
いつものステージと同じパフォーマンスをしてきたつもりでいたけど


そんな些細な変化でさえ、
彼女のAには分かってしまうのかと
静かに息を吐き出した。




「ご飯は食べてきたんだよね？」

「うん」

「じゃあコーヒーでも飲む？」




ソファに座った俺にそう聞いてくれた彼女に
「体が健やかになるお茶をください」と言った。




気分が冴えないなら、
せめて体くらいは健やかにね笑




今日は一日中ずっと、
低空飛行のままのような気分だった。


天気で表すとするならば
しとしととした雨が長く降り続いているような、
まさしく気分が晴れないといったところか。




たとえそんな日でも、曲を演奏するとなれば
気分が上がることも多いんだけど、


演奏したい欲は先日のライブで満たされちゃった部分もあるし
それでこの低空飛行なのかな？




お茶のペットボトルを渡されてキャップを捻る。
ひと口飲むと、俺の隣に座ったAの膝に
ごろんと寝ころんだ。




「初出演だったし？」

「あの番組、初めてだった？」

「うん、変わってからは初めて」

「そうなんだ」

「それに生放送だったからかな」




気分が上がらないもっともらしい理由を考えてみる。





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