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#145_月色ホライズン ページ40

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発売したアルバムのアジアツアーが始まって
海外へ向かう飛行機の中でのことだった。




「洋平、なにしてんの？」

「んー？歌詞考えてる」




仕事を始めようとしたら、
隣の座席に座るヒロから話し掛けられた。




「こんな時まで仕事とはボーカリストも大変だね」

「ははっ、まあね。さっき にーやんから
締め切り近いけどって釘刺されちゃったし笑」

「ああ、じゃあ今度のシングルの歌詞？」

「うん、そう」




どんな歌詞にしようかと頭の中を巡らせながら、
手にした鉛筆をくるくると回す。




「スマホじゃないんだ」

「うん、なんとなく紙と鉛筆がいいかなって思ったから」

「最近、文字書かなくなったもんなあ。
そう考えると、紙と鉛筆の擦れる音っていいよね」

「うん。打ち込むのと実際書くのとじゃ、
言葉の閃きも違うような気がするんだよね」

「あー、なるほどね。じゃあ頑張って」

「おー」




そう言った後、ヒロは即座に目を閉じた。




そうですか。
ヒロさんは仕事する俺を放って
就寝するんですね。




自分だけ寝るなんてズルイな！と思った俺は、
眠れないように邪魔してやりたくなって


ヒロの体をくすぐろうと手を伸ばしかけたけど、
まあ、歌詞を書かなくちゃいけないし、
隣で大人しく寝てもらった方が好都合と考え直した。




今回の海外ツアーはスケジュールがキツめなので、
ヒロ的には少しでも休憩を取っておこうという腹積もりなんだろう。




今回は、約1ヶ月くらいの間で
アジアの5,6箇所を周るライブツアー。




それだけ聞くと期間も短いし
あまり大変そうに思えないかもしれないけど、


何度も飛行機に乗って、
次の都市に移動する間に東京に戻る用事があったりと
見た目以上にタイトなスケジュールになっている。





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