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「っうぁ……!」
左の肩口から右脇腹にかけて斬られ、血が吹き出す。飛びのいたおかげで急所からは逸れたようだが、決して浅くはない傷だった。
激痛で着地もままならず、バシャリと水しぶきを上げながら地面に転がってしまう。
「はっ…はぁっ……。うっ、ぐっ……」
再生がすぐに始まり、少しずつ痛みが薄れていく傷口を手で押さえながら立ち上がろうとするも、生まれたこの隙が命取りであるのは明白だった。
「死ね」
雨が地面を叩く音に混ざって鋭い風切り音が耳に届き、白い残像を残しながら、弧を描いて刀が振り下ろされる。
スローモーションのようにやけにゆっくりと見えるその動き。
――殺される。
「ッ……!」
次にやって来るであろう痛みを覚悟し、私は固く目を閉じた。
――が。
「ぐぁ!!」
痛みはまるで感じず、更に自分の体が斬られる音すらしなかった。
代わりに聞こえた苦痛に呻く声と、パタタッと頬にかかった生温かいモノの感触に、驚いて目を見開く。
「え……?」
――最初に目に飛び込んだのは、目で追えないくらいのスピードで動く、幾筋もの白い残像。
次に見えたのは、それを操る黒い服を着た見慣れた人の姿と、体から血飛沫を上げて倒れていく志士たち。
目の前の光景に、理解が追い付かない。
そうして呆然として見ている間に、残っていた志士たちは一人残らず死体になってしまっていた。
ジワジワと雨水に広がっていく赤黒い血と、それを浴びたその人から目が離せない。
「おき、た…たい、ちょう……?」
……何で、ここに。
「A!」
隊長は刀を鞘に納めて、初めて私のことを呼び捨てにして駆け寄り、私の上半身を抱え起こした。
「しっかりしろィ!」
聞いた事もない必死な声と、見たこともない心配そうな表情に内心で驚く。
昨日、あんな八つ当たりなんてしたのに、助けに……。
冷え切った体にその温もりが染みてきて、酷く安堵すると同時。
初めて私は、自分が震えていたことに気が付いた。
「…大、丈夫、です……から……」
余りにも必死な隊長の服を掴んで、私は息切れしながら弱々しく言葉を紡ぐ。
そんな、必死にならなくてもいいから。
そう伝えたかったのに、緊張の糸が切れたのか、それとも疲労からなのか。急速に目の前が暗くなっていく。
「っおい!」
焦ったような隊長の声を最後に、私は意識を手放した。
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伽那 - 一言で言うとこれめっちゃ好き (2019年11月26日 22時) (レス) id: dad38348f0 (このIDを非表示/違反報告)
霜夜華(プロフ) - 沖田総悟さん» ありがとうございます!!もう!受験早く終われ!!!(泣)じわじわ更新ですが頑張ります! (2018年1月5日 8時) (レス) id: 3282eb2821 (このIDを非表示/違反報告)
沖田総悟 - とっても面白かったです!!キュンキュンもするし、見ながら泣きました‥。更新がんばってください!そして、受験ガンバってくださいね!!応援してます!! (2018年1月4日 19時) (レス) id: b86e1fcd7d (このIDを非表示/違反報告)
霜夜華(プロフ) - にんじん さん» あぁありがとうございます!!(泣)あと9日なんですよねー……ハハ。頑張ります! (2018年1月4日 14時) (レス) id: e79ecf6629 (このIDを非表示/違反報告)
にんじん - 受験頑張ってください!応援してます! (2018年1月4日 14時) (レス) id: 1018656ff9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:霜夜華 | 作成日時:2017年9月29日 20時