【ダイヤのA】部活終了後のマネージャー室《短編集》

【伊佐敷純と停電】 ページ10

「…で、この時は哲の2塁打で、純がホームまで帰って得点が入ったから丸がついてるの。」

「なるほどな。」

今日の部活が終わって間もなく、純がスコアの見方を教えろと言ってきた。
クリスと御幸がスコアブックを見ながら話しているのを見て、急に興味が湧いたらしい。

…と、その時、何の前触れもなく、フッと電気が消えた。

「えっ！？何っ！？」

「停電…か？」

部屋の中は完璧に真っ暗になってしまって、身動きが取れない。
何で、よりによってこんな日に…

「じ、純？そこにいるよね？」

そう言ってさっきまで純がいた隣へ目を向けると、暗闇の中に急に純の顔がボウッと浮かび上がった。

「ぎゃあああぁぁぁ！！」

「うるせぇっ！！目の前で叫ぶな！！」

バシッと私の頭を遠慮なく叩く純をよく見ると、手に携帯を持っている。
…あぁ、その光だったのか…。

「ご、ごめん…。今日、昼休みに怪談大会して、その余韻が…」

「…わかった。あんまり詳しく話すな。」

「誰もいない家で、真夜中に窓の外を白い光がボウッと…」

「だから話すなっつってんだろ！？」

「もしかして純、怖いの苦手？」

「冷や汗かいてるお前には言われたくねぇ！！」

と、その時。
私たちが座っている机の前にある窓の外を、ボウッとした白い光がゆっくりと横切った。

「………み、見た？」

「見た…けど、ち、違うだろ、あれは人魂なんかじゃ…」

「人魂言うなぁっ！」

思わず、純の胸ぐらをガシッと掴んで揺さぶりながら言う。

ゴンゴン

その時不意にドアから音がして、私と純は二人してバッとドアを振り向く。

ゴンゴン ゴンゴン

「お、お前出ろよ…」

「なんでよ！？普通男子が行くでしょ！？」

「空手5段だろ！？俺を守れ！！」

「5段じゃないっ！3段！」

「俺からしたらどっちでも一緒だ！」

「ってか、そもそも幽霊に空手が通用するわけが…」

「幽霊って言うんじゃねぇ！！」

ぎゃあぎゃあと言い争っていると、

ギギギギギギ…

と、いつになく軋んだ音を立ててドアがゆっくり開いた。

「いやあああぁぁぁ！！」

「っざけんなああぁぁぁ！！」

パッと、電気がついたのはその時だった。

「………何やってんの？」

ドアを開けて入ってきたのは、携帯を手に持った亮介で。

その亮介が見たのは、立ち上がって拳を構えた私と、イスに座ったまま私の腰に抱きついてる純。

亮介が無言で携帯を構えてパシャッとシャッターを切るのを、私たちは呆然としながら見ていた…。

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