《番外編》【御幸一也と映画】 ページ49
「いやぁ、面白いモンが見れたなぁ。」
隣を歩く腹黒メガネは、ニコニコと非常に上機嫌だ。
それに対し、私はしかめっ面で極力隣を見ないようにして歩いている。
ついさっきまで泣いていたので、こんな顔はできるだけ見せたくない。
「Aさんって意外と涙脆いんですね。」
「うるさいっ。」
先日、大騒ぎした写真コンテストの副賞が届いたのだが…開けてみると、それは映画のペアチケットだった。
特に欲しいものでもなかったから、丸ごと御幸にあげようとしたら…
何を思ったのか、御幸が一緒に行こうと言い出した。
やんわり断ろうと思っていたのに、いつの間にか丸め込まれ…練習が早めに終わった今日、二人で映画に行くことになったのだ。
しかもその映画が、今ちょうど観たいものが上映されてなくて…仕方なく邦画のラブストーリーを選んだら、これがけっこうな感動もので、私は後半泣きっぱなしだった。
なんで御幸の前でこんなに泣かなきゃならないのか…恥ずかし過ぎる。
映画館を出て歩きながら、はぁ、と私が何度目かのため息をついた時。
「ねぇ、君たち高校生?今ね、テレビの特番で、カップルにインタビューしてるんだけど…」
と、カメラマンを従えたスタッフらしき人が声をかけてきた。
嘘でしょ、こんな時に…
私、今人に見せられる顔してないよ…
思わずその人から顔を背けた、その時。
ぐいっ、と、御幸が右手で私の肩を抱き寄せて…私は御幸の胸にすっぽり収められてしまった。
「…スミマセン。俺の彼女、照れ屋さんなんで…そういうの勘弁してください。」
スタッフらしき人にそう言うと、御幸は私の耳元で「走るぞ」と囁いて、私の肩を抱いたまま走り始めた。
「…そろそろ、いいか…」
角を二つほど曲がったところで御幸がそう呟いて、ようやく止まってくれた…けど。
…どうしよう。
心臓がバクバクうるさいのは、きっと走ったから…だけじゃない。
御幸の顔がまともに見れない…。
「Aさん?」
顔を上げない私を不思議に思ったのか、御幸が声をかけてくる。
「…さっきは…ありがと…」
とりあえず、俯いたままお礼を言う。
「…いえ…あー、とりあえず、どっかで休憩しますか。」
すると、御幸が頭を掻きながらそんな提案をしてきた。
ゆっくり顔を上げると、ニッと口角を上げていつものいたずらっぽい笑みを浮かべる。
「Aさんの顔、涙目だし、真っ赤だし、もうぐちゃぐちゃ。」
「うるさいなぁっ!」
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暇人 - フランス革命さん» ちゃんと読んでなくて草。中学生ではないネタ何個もあるのに。 (1月6日 11時) (レス) id: 9409c0bbe7 (このIDを非表示/違反報告)
味塩 - すごく好みで面白かったです!!ギャグ夢大好きで、夢主のノリも理想通りで本当に最高でした…!全シリーズ読んだのですがまた最初から読みたくなっちゃいました。どれもそのキャラらしさが出ていて本当に面白いです (2022年10月27日 1時) (レス) id: 2296c25889 (このIDを非表示/違反報告)
にゃん丸(プロフ) - もう、すごく面白くて、大笑いしました。亮介さんLoveなので、本当はこのキャラでの長編が読みたいですが、続きも楽しみです。 (2022年1月26日 20時) (レス) @page49 id: 07285a2235 (このIDを非表示/違反報告)
にゃん丸(プロフ) - もう、すごく面白くて、大笑いしました。 (2022年1月26日 20時) (レス) @page49 id: 07285a2235 (このIDを非表示/違反報告)
フランス革命(プロフ) - 中学生バレバレで草。高校のテストこんな甘くねーよ (2019年7月29日 21時) (レス) id: 6067ba3fc2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雪星 | 作成日時:2015年6月7日 16時