【ダイヤのA】部活終了後のマネージャー室《短編集》

【小湊亮介の独白】 ページ41

※亮介視点
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今日もAに悪戯を仕掛けようと、マネージャー室の扉を叩いた。
…が、返事がない。
珍しく早く帰ったのかな？
そう思いながら扉を開くと…机に突っ伏して寝ているAを見つけた。

とりあえず静かに扉を閉めて、近付いてみる。
けっこう本気で寝入ってるみたいで、規則正しい寝息が聞こえた。

まいったな…。
さすがにこれじゃあ、悪戯も何も…。

俺はAの隣のイスに腰を降ろした。

自分の腕に顔を載せて寝ているAは…ムカつくけどやっぱり綺麗だ。
普段はあのサバサバした性格のおかげであまり意識しないけど…小さめの顔とか、スッとした目鼻立ちとか、改めて見ると立派に美人だと思い知らされる。

「…まぁ、知ってたけど…さ。」

俺は小声で呟いた。
その時、ハラリ、と、Aの髪が一房落ちてきて、顔を隠してしまった。
俺はそっと手を伸ばし、その髪を上げて耳にかけてやる。

…たぶん…
Aに対して、特別な感情がないと言えば…嘘になる。
でも今は、付き合いたいとか、独り占めしたいとか、そういうことよりも…
二年間苦楽を共にしてきた仲間として、これからも同じ時間を共有したい。
俺の悪戯に、大袈裟に反応するAを見ていたい。

…気になる女の子に悪戯するなんて…俺もまだまだ子供だよね。
でも…仕方ないじゃん。
今は、その時間が凄く幸せなんだから…。
だから…さ。

「…もう暫くは…誰のものにもならずにいてよ…」

俺は、Aの頭を撫でながら呟いた。
そして…願わくば、いつかその隣に…。


そんな事を考えていると、Aの長い睫毛が震えて瞳が開かれた。

「…あ…れ？…亮介？」

「おはよ。」

Aはゆっくりと体を起こした。

「やっば…私、いつの間に寝ちゃってたんだろ…」

「イビキかいてたよ。」

「うそぉ！？」

うん、嘘。

「そーいう時はすぐ起こしてよ！」

「さっき来たとこなんだってば。」

これは半分嘘。
ちょっと寝顔を堪能させてもらいました。

「うわぁ、早く帰らなきゃ…」

「…送っていこうか？」

バタバタと帰り支度を始めるAに、何でもないことのように呟けば…ピタッと動きを止めて変な顔で振り返った。

「…明日、槍が降るんじゃ…いや、地球が破滅するかも…」

「…そういうこと言うと、鼻ちょうちん作って寝てる写真、野球部のLINEに上げるよ？」

「嘘でしょ！？やめてよ！！」

嘘だよ。
ごめんね、やっぱり俺、こういう時が一番楽しいんだ。

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