【ダイヤのA】部活終了後のマネージャー室《短編集》

【財前直行の事情】★ ページ5

ある日、ガンガンガンッ！とドアを乱暴に叩かれた。
誰だろう？と思いながらドアを開けると、強面のヤンキーが立っていた。

「あの…どちら様…で…」

と、そこで私は、そいつの制服が他校のものであることに気付いた。

しかも。
こいつ、見たことある…確か…

「そうだっ！黒士舘の財前！」

「いきなり呼び捨てとはいい度胸だな。」

そういうと、財前は勝手に部屋に入り込んで、近くの椅子にドカッと座った。

「…何の用…ですか？」

「近くまで来たから寄っただけだ。お前はマネージャーか？」

「そうだけど…。」

「…クリスは…いるのか？」

そうか、こいつクリスと知り合いだったな。

「部屋にいると思うけど。呼んでこようか？」

「いや、呼ぶな。ここにいることがバレたら…怒られる…。」

えっと…。
顔赤らめてクリスの名前呼ばないでよね。
変な想像しちゃうから。

その時、ドアがコンコンとノックされ、すぐにガチャッと開いて…

「A？いるか？スコアブックを…。」

クリス本人が入ってきた。
すぐに財前に気付き、驚いた表情になる。

「財前。…なぜここに？」

「〜っ、仕方ねぇだろ！気付いたら来ちまってたんだよ！」

相変わらず赤面したまま財前が答える。
…あのぅ…。

「別に、お前に会いに来たわけじゃねぇぞ！」

…すみません、もうツンデレ発言にしか聞こえません。

「…おそらくリハビリの帰りなんだろうが…連れの人はどうした？病院まで一人で行ったわけじゃないだろう？…抜け出してきたのか？」

「俺にだって行きたい所があんだよ！」

それは…ク、クリスのところ、ですか？

「…一人で出歩くなと昔から言ってるだろう…。」

えっ？まさかクリスって過保護！？

「…仕方ない。駅まで送ろう。」

ため息をつきながらクリスが言った。
こ、これは、もしや…！と、私の頭がイケナイ想像でいっぱいになりかけた時、

「A、お前も来てくれ。」

と、クリスが言った。

「えっ？…でも…お邪魔では…。」

「邪魔？何がだ？…あぁ、そうだ、こうなってしまった以上、お前には話しておくが…。」

「な、何を？」

「財前はな…。」

ドキドキドキ。




「方向音痴なんだ。」


…………………………………。


「ほ、方向音痴！？」

「勝手に出歩いて、迷子になったんだろう。俺と財前だけだと間がもたない。すまないが一緒に駅まで来てくれ。」

私はゆっくり財前を見た。

「…悪いな。」

恥ずかしさで赤面したまま、財前が言った…。

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