【御幸一也の場合(5)】 ページ39
コンコンコン
春市君が出て行ってから間もなく、今日にしては珍しくドアが普通にノックされた。
もうさっさと帰ろうと思ってたのに…。
「…どうぞ。」
嫌な予感しかしないけど、仕方なく返事をすると…
「年下の彼氏が来ましたよー。」
ガチャッとドアを開けながら、ニヤニヤと御幸が入ってきた。
言い方から察するに、御幸もあの雑誌の事を知ったらしい。
「…私、今は御幸の顔見たくないんだけど。八つ当たりしそうで。」
「八つ当たり?」
「御幸も唯と幸子から聞いたんでしょ?」
「まぁそうですけどね。あいつら、寮の全部屋回ってるみたいなんで。」
全部屋って…
その行動力は別の事に生かしてくれないだろうか…
私はうんざりしながらため息をついた。
「…おかげでさっきから、入れ替わり立ち替わり誰かしらやってきて…あの写真は何だ、御幸と付き合ってんのか、って…。もう疲れた…」
「…モテモテじゃないですか。」
「茶化さないでよ。」
キッと睨んで言うと、目を逸らしてスミマセン、と言われた。
「…で、御幸は一体何しに来たの?」
「…それは…」
投げやりに聞くと、御幸がポリポリと頭を掻きながら、珍しく言い淀んだ。
…が、ふぅ、と息をついて、腹を決めたように顔を上げる。
なんだか真剣なその表情に、なぜか胸がざわついた。
「…Aさんに…大事な話があるんですよ。」
そう言うと、御幸はゆっくりと私に近付き始めた。
「だ、大事な、話?…ってか、ちょっと…御幸…!」
「雑誌に載っちゃった以上、そろそろはっきりさせといた方がいいかと思って…」
御幸が近付いてきた分、後退りをしていたけど…とうとう背中が壁に当たってしまった。
それでも御幸は近付いてくるし…これは…!
私を壁に追い詰めた御幸は、右手をスッと伸ばして壁につけ、上半身を屈めて顔を近付けてくる。
相変わらずの、整った顔立ち。
少し伏し目がちの視線は、メガネ越しでも十分色っぽくて…
「Aさん…」
だから…!
その綺麗な顔で迫ってくるの、反則…!
「副賞、山分けでお願いしますね。」
「……は?」
「いやほら、一応俺と一緒に写った写真が賞取ったわけじゃないですか。だから、ここは一つ山分けで♪」
「……この壁ドンには何の意味があるの?」
「こうすれば断れないかと。」
してやったり、とばかりに笑みを浮かべる御幸に、私は赤面したまま過去最大のため息をついた。
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暇人 - フランス革命さん» ちゃんと読んでなくて草。中学生ではないネタ何個もあるのに。 (1月6日 11時) (レス) id: 9409c0bbe7 (このIDを非表示/違反報告)
味塩 - すごく好みで面白かったです!!ギャグ夢大好きで、夢主のノリも理想通りで本当に最高でした…!全シリーズ読んだのですがまた最初から読みたくなっちゃいました。どれもそのキャラらしさが出ていて本当に面白いです (2022年10月27日 1時) (レス) id: 2296c25889 (このIDを非表示/違反報告)
にゃん丸(プロフ) - もう、すごく面白くて、大笑いしました。亮介さんLoveなので、本当はこのキャラでの長編が読みたいですが、続きも楽しみです。 (2022年1月26日 20時) (レス) @page49 id: 07285a2235 (このIDを非表示/違反報告)
にゃん丸(プロフ) - もう、すごく面白くて、大笑いしました。 (2022年1月26日 20時) (レス) @page49 id: 07285a2235 (このIDを非表示/違反報告)
フランス革命(プロフ) - 中学生バレバレで草。高校のテストこんな甘くねーよ (2019年7月29日 21時) (レス) id: 6067ba3fc2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雪星 | 作成日時:2015年6月7日 16時