【ダイヤのA】部活終了後のマネージャー室《短編集》

【成宮鳴の扱い方】★ ページ31

バッタアアァァン！！

「ちょっとAさんっ！聞いてよー！！」

ドアを開けきらないうちから聞こえてきた声は、ウチの部員のものではない。
今日は日曜日だから、これはたぶん…

「…やっぱり…成宮君…」

「今日さ、練習試合だったんだけど、もぉ最悪でさー。」

何やらぷりぷりとご立腹の成宮君は、相変わらず何の迷いもなく部屋に入ってきてストン、とイスに座る。

「ダブルヘッダーだったんだけど、俺7回しか投げさせてもらえなくてさー。2試合目なんか、ずっとベンチで出番なしだよ！？」

「…そ、そうだったんだ…」

「俺を使わないなんて、監督も雅さんも何考えてんだろ？意味わかんないんだけど！」

「えっと…」

私はポリポリと頬を掻きながら考えた。

どこと試合したのかわからないけど、地力の差がありすぎたか、試合形式で試してみたい選手や作戦があったか…。
監督や原田君はそんな事を考えてたんだと思うけど…。
こんな事は、今さら私が言わなくても成宮君もわかってるはずで。

目の前でぷうっと頬を膨らませているこの他校のエース殿は、要するに不完全燃焼な気持ちを誰かに聞いて欲しいだけなんだろう。

「…まぁ、充実感はないだろうねぇ。」

「そうなんだよ、もう全っ然！！」

「…でも、試合は勝ったんでしょ？」

「一応ねー。」

「成宮君、今日打つ方はどうだったの？」

「あっ！そうそう聞いて！俺今日、3打数3安打！打率10割の猛打賞！」

先ほどまでとは打って変わって、パアァッと顔を輝かせてピースサインを出しながら成宮君が答える。

「へぇー！凄いね！さすが成宮君！」

「…っ！ま、まあ、俺が本気出せば、これくらい当然だし！」

「いやいや、ちゃんと投打とも結果残せる人は中々いないよ。」

「い、一応、俺、エースだし！5番だし！やる時はやるって言うかっ…」

「うん。責任ある立場で頑張ったんだよね。お疲れ様。」

「〜〜っ！」

話しているうちに、成宮君の顔は真っ赤になっていってしまった。
…そうだった。
成宮君は、『誉めて誉めて』って顔に書いてある割に、実際に誉めると赤面するというカワイイ反応をしてくれるんだった。

「…あのさ、成宮君。アイス好き？」

私はニヤけそうなる顔を必死に整えて成宮君に聞いた。

「えっ？アイス？」

「帰りに食べようと思って買ってたヤツがあるんだけど、半分こする？」

「する！」

目をキラキラさせながら即答した成宮君に、私は我慢できずにニヤッと笑ってしまったのだった。

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