【ダイヤのA】部活終了後のマネージャー室《短編集》

【沢村栄純と数学】 ページ29

バッタアアァァン！！

私はゆっくりとドアを振り返った。
この音を作る人物には二人ほど心当たりがあるが、今日は平日だから…

「A先輩っ！」

「やっぱり沢村か…」

「日本の教育界はどうなっているのでありましょうか！？」

「バカ村の口から出たとは思えない発言だね…」

「この俺に！青道高校野球部の未来のエースであるこの俺に！赤点を取らせるとは！！」

「…赤点取ったんかい…」

沢村の話を要約すると、先日の数学のテストで赤点を取ってしまい、授業での解説を聞いてもよくわからず、このままではさすがに悔しいんで解き方を教えてくれということだった。

「数学かぁ…私も数学はあんまり得意じゃないんだよね。クリスに聞いた方が無難かもよ？」

「それが、先程クリス先輩にご教授をお願いしたのですが…

『…教えてやりたいのはやまやまだが、残念ながら俺のレベルでは、お前に理解させてやる事は不可能だな。』

…と、仰られまして。」

「…沢村…それ、要するにバカ過ぎて手に負えないってことだと思うけど…」

「クリス先輩のレベルすら越えてしまう俺の頭脳が恐ろしい…！」

「…私もある意味恐ろしいわ。」

「というワケでありまして！A先輩に、ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げ奉りたく！」

「あぁもうわかったから、とりあえずテスト見せてよ。」

そう言って、沢村から見せてもらった答案用紙には…



■白玉2個、赤玉3個、青玉1個を1列に並べる方法は何通りあるか？


沢村の答え：縦か横


■3枚の硬貨を同時に投げる時、表が2枚出る確率を求めよ。


沢村の答え：お金を粗末に扱ってはいけない！


■√3が無理数であることを用いて、1/√2+1/√6が無理数であることを証明せよ。


沢村の答え：むりっすー



「…なんかもうどこから突っ込んだらいいかわからない…」

「くっ…やはり俺のレベルが高過ぎて…」

「逆よ逆！数学のテストなのに、なんで答えに数字が出てこないの！？」

「この世の理を全て数字で表すのは不可能ですよ、A先輩。」

前髪を掻き上げながら、なぜか凄く偉そうに沢村が言う。

「…悟りを開いたようなこと言ってないで、普通に勉強しなさい。」

「だいたい、このテストが社会生活の何の役に立つって言うんスかぁっ！」

「…沢村。世の中の高校生が一度は思う虚しい疑問を口にしても、何も解決しないから。わかったら基本からやり直し！」

「ちくしょおおぉぉ！！」

「勉強する気あるの？ないの？」

【金丸信二の名前】※やりたい放題(^^;→←【小湊亮介のごまかし方】★※「春市と風邪薬」から続けてお読みください

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