【ダイヤのA】部活終了後のマネージャー室《短編集》

【小湊亮介のごまかし方】★※「春市と風邪薬」から続けてお読みください ページ28

「これは何？」

部活が終わってからマネージャー室に呼び出した亮介に、私は先日春市君から没収した薬を見せた。

「何って…風邪薬でしょ？あれ？それ、春市にあげたんだけど…」

「本当に風邪薬？」

「本当だよ。多少、副作用は出るかもしれないみたいだけど…」

「どこで手に入れたの？」

「…やけに気にするんだね…」

「いいから答えて！どうせ怪しげな裏ルートでしょ？」

そう言うと、亮介がフッと笑いながらゆっくり近付いてきた。

「ねぇ…A。もしかして…薬飲んだ春市と…何かあった？」

「っ！」

な、なんでいきなり核心ついてくるかな…！

私は亮介の前で仁王立ちしてたんだけど、亮介が近付いてくるもんだから、ジリジリと後退させられて…

「…ふぅん？何があったの？詳しく教えてよ。」

気付けば、背中がロッカーに当たって逃げ場がない。

「りょ、亮介には関係ない！」

「言えないような事なんだ？」

亮介がスッと左手を上げて、私の顔の横辺りにトンッとつける。
…だからっ、どうしてこの兄弟は…！

「Aってさ…ほんとに男に免疫ないよね。ちょっと迫るとすぐ赤くなる。」

「そ、それ以上近付いたら、殴るよ！」

拳を握り締めて言ってみるものの、亮介には効果がないみたいで…
クスッと笑いながら、亮介は目を細めて私を見つめ、顔を近付けてくる。

「やってみなよ。できないと思うけど。」

そう言って、亮介は右手を私の耳辺りに伸ばし、髪の毛を一房すくい取った。

「ねぇ、A。春市が何したか知らないけど…それ全部、俺が忘れさせてあげようか？」

「っ！？」

怪しい微笑みを浮かべたまま、亮介は手にした髪の毛をゆっくりと口元へ持っていき…そのまま…口付けた…。

「頭の中、俺でいっぱいにしちゃいなよ。」

狂気すら漂うような亮介の雰囲気に、私が完全に言葉を失っていた時。

コンコン ガチャッ

「すまない、亮介は…」

凄いタイミングで哲が入ってきた。
亮介が私の髪を持っているのに気付くと、ハッとした表情になる。

「亮介…A…」

「て、哲…！こ、これは、その…！」

「髪を切るなら、何か敷いた方がいいぞ？」

「「………………。」」

ふぅ

「今日はここまでにしとくよ。…続きはまた今度。」

小声でそう言うと、亮介は私の手から薬を取り、くるっと向きを変えて哲と一緒に出ていった。

薬は取り返されるわ、出所は聞き出せないわ…
もの凄いやり方で私を煙に巻いた亮介は、やはり一枚上手だった…。

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