【ダイヤのA】部活終了後のマネージャー室《短編集》

【伊佐敷純と少女漫画】 ページ17

コンコン ガチャッ

「おい、Aー。これ終わった。続き貸してくれ。」

ノックしながら扉を開けて入ってきたのは、紙袋を下げた純だった。

「もう読み終わったの？早いねー。面白かった？」

「あぁ。続きが気になる。…ブッ飛んだ設定だけどな。女子が男子校に入って、男のフリして寮生活するなんてよ。」

「まぁね。…あ、ねぇねぇ、もし、ウチの寮にも『実は女の子だった』っていう子がいたらどうする？」

「はぁ？いるわけねぇだろ。有り得ねぇ。」

「有り得ないのはわかってるって。でもさ、ほら、例えば、春市君が女の子だったとしたら…」

「「……………………………………。」」


それは、有り得てしまうかもしれない。


「…えっと、今のなし。」

「お、おう…」

「だから…例えば、東条君が女の子だったとしたら…」

「「……………………………………。」」


それも、有り得てしまうかもしれない。


「…おかしいな、『ないよねー』って笑いとばすつもりが…」

「お、お前がそういう中性的なヤツらを選ぶから、話がおかしくなんだろうが！！だから、例えば宮内がだなぁ…」

宮内啓介が、女の子だったとしたら。
あの、

「ンフーーーッ！！」

と鼻息荒い、筋トレマニアの啓介が、女の子…



『んふっ♪』



「「……オ、オエエェェ……」」



「し、しまった…『女の子だったら』っていうより、女装させて考えちゃった…」

「お、俺も…」

「そもそも、啓介って極端過ぎ！」

「妙にリアルな想像しちまうお前のチョイスよりマシだろ！」

と、その時、コンコン、とドアがノックされ、ガチャッと開いた。

「失礼します…。えっと、ここに伊佐敷先輩って来てますか？」

ヒョコン、と顔を覗かせたのは…何の因果か、東条君だった…。

「純ならここにいるよ。」

「あっ、良かった。」

と、ニコッと笑う東条君。
すると、純の顔がみるみる赤くなっていき…

「そ、そんな顔で俺を見るんじゃねええぇぇっ！！」

そう叫んだかと思うと、ダダダダダッと部屋から駆け出して行った。

「……えっと…ど、どうしたんですかね、伊佐敷先輩…」

「あー、あれね、たぶん今、中津ヴィジョン(※)。」
(※相手がキラキラ輝いて、現実以上に可愛く見えてしまうこと)

「は？中津？」

「気にしないでいいよ。そのうち元に戻るから。」

「は、はぁ…」

漫画の影響力は偉大なり。

※『花ざかりの君たちへ』より。古い漫画引っ張り出し＆読んだ事ない人、ごめんなさい。

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