【ダイヤのA】部活終了後のマネージャー室《短編集》

【成宮鳴の反応】★ ページ13

バッタアアァァン！！

ある日曜日の夕方。
細々した道具のメンテナンスをしていると、ドアが勢いよく開かれた。
この音には聞き覚えがある。

「沢村！ノックし」

「Aさーん！俺だよー！来ちゃったー！」

「…は？成宮君？」

満面の笑みで入ってきたのは、練習着姿の成宮君だった。

「え？なんで？」

「Aさんに会いたくて、ロードワークの途中で寄り道した♪」

「寄り道って…ここと稲実じゃ…」

「細かいことは気にしなーいの。」

ニコニコしながら部屋に入ってきて、ストン、と私の隣に座る。
やれやれ、毎回唐突に現れるなぁ。

…と、そこで私は、前に成宮君にジュースを奢ってもらったことを思い出した。

「…喉乾いてない？スポーツドリンクならあるけど。」

「えっ！？いいの！？」

「いいよ。この前奢ってもらっちゃったし、お返しね。」

「Aさん…優しい…」

差し出したペットボトルを、私の手ごとぎゅうっと握って成宮君が言う。
目までウルウルさせて…なんか、子犬に懐かれたみたい。

「成宮君、カワイイ。」

ふふっと笑いながら言うと、成宮君の顔がみるみる赤くなってきた。

「カ、カワイイって…俺、男だし！別に嬉しくないし！」

「顔赤いよ？」

「こ、これは！翼さんが急に変なこと言うから…！」

…ヤバい、本気でカワイイんだけど。
ウチのメンバーにはない反応だから、余計にそう思うのかな。

「ごめんごめん！高2男子にカワイイはダメか。…じゃあ…」

私は少し考えて、ニッと笑いながら言った。

「前から思ってたけど、マウンドに立ってる時の成宮君、凄くカッコいいよ！」

試合に負けたら、それはそれで悔しいんだけど、なんて言ってる間に、成宮君の顔が耳まで真っ赤になってしまった。

「…Aさん…それ、反則…！」

「成宮君、やっぱカワイイ♪」

すると、成宮君が赤い顔のままガバッと立ち上がった。

「い、言っとくけど！Aさんの方が100倍カワイイからね！！」

そう言って、ダッとドアへ駆け出し、一度立ち止まって、

「また来るからね！」

と赤い顔のまま振り向き様に言うと、猛スピードで帰って行った。

「…言い逃げ…カ、カワイイ〜」

と、机をバンバン叩きながら一人で悶えていると、開いたままのドアをコンコンしながら入ってきた春市君が、

「A先輩？」

と首を傾げたもんだから…変なスイッチが入っていた私は、あぁっ、こっちもカワイイ！と、さらに悶えたのであった。

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