【一年生の場合・壱(2)】 ページ3
向井君が出ていってから暫くして、コンコンコン、とドアがノックされた。
「はぁい。開いてるよー。」
そう声をかけると、ガチャッとドアが開かれて…
「あ、ほら、やっぱりA先輩だ。」
「…マジかよ…」
ニコッと笑顔の東条君と、うげっという顔をした金丸が入ってきた。
「二人とも久しぶりー。ってか、凄いタイミングで来たねぇ。」
「向井がこの部屋から出てくるのが見えたんで、もしかしたらA先輩が来てるんじゃないかと思ったんです。」
「あー、なるほど…」
そういえばこの二人は向井君と面識があるんだっけ…。
私は苦笑いを浮かべてそう言ったあと、はた、とここに来た目的を思い出してガサゴソと紙袋を漁った。
「まぁそれはいいとして…はい。」
…と、二人に持ってきたチョコを差し出した。
「え…」
「これ…」
「少なくてごめんねー。なんせ人数多いから、どうしても一人当たりの量が少なくなっちゃって。」
「…もしかして…部員全員に用意したんですか?」
あはは、と誤魔化すように笑いながら言ったら、金丸がビックリしたみたいに聞いてきた。
「うん。だってあげる人とあげない人がいたらダメじゃん、やっぱり。」
「さすがA先輩ですね…ありがとうございます。」
ポリポリと頬を掻きながら東条君が言い、その隣で金丸も目を泳がせながら「アリガトウゴザイマス」と小声で言ってくれた。
それを見て私はニマッと笑う。
「どういたしまして。できることならみんなに心からの本命チョコをあげたいんだけど、やっぱ本命はたった一つのオンリーワンな気持ちをのせて…」
「あはは。要らないです。」
「全力で辞退だな。」
「…お世辞でもいいから『わー残念』とか言いなさいよ…」
あっさりすっぱり二人に拒否られてこめかみをヒクつかせていると、ドアの方がザワザワと騒がしくなってきて___
バッタアアァァン!!
「A先輩ー!!」
「え、栄純君!いるとは限らな…あれ?」
「あ…」
三者三様の言葉を発しながら入ってきたのは、沢村、春市君、降谷君。
「ほらな!?さっき、回し蹴りの幻覚が甦る先輩の声が聞こえたんだよ!」
「…悪かったわね。」
ビシッと私を指差しながら言う沢村を半目で見ていると、その沢村は東条君と金丸が持っているチョコを見て目を丸くしている。
「そ…それは…まさか…!」
「あぁ…さっき、A先輩から貰ったんだよ。」
東条君のその答えに、沢村はカッと目を見開いて私を見た。
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雪星(プロフ) - 椰子の実さん» 椰子の実さん、コメントありがとうございます!大好きと言ってもらえるだけで嬉しいのに、頻繁に読んでくださっているとは…!元々自分の息抜きで始めたある意味バカバカしい短編集ですが(^^;楽しんで書いてますので、また読んでやってくださいっ(≧▽≦) (2016年9月11日 22時) (レス) id: 1f6d2a7be2 (このIDを非表示/違反報告)
椰子の実 - このシリーズが本当に大好きで大好きで、ほぼ毎日読んでる感あります(笑) (2016年9月11日 20時) (レス) id: 5b93e46beb (このIDを非表示/違反報告)
雪星(プロフ) - 抹茶さん» 抹茶さん、コメありがとうございます!夢主は、制服の時は基本的に短パン装着してる設定です(^^;すぐ足が出る自覚があるので…(^^;たまに忘れてたりして、倉持や白河君がその場面に遭遇してラッキースケベが発動してます(^^; (2016年4月6日 23時) (レス) id: 1f6d2a7be2 (このIDを非表示/違反報告)
抹茶 - この作品とっても面白いです(^^♪後、前々からずっと気になってた事があるんですが夢主ってよく回し蹴り?してますよね、この時パンツ丸見えになってないんですか?もし、見えてたら倉持達は見て見ぬふりをしているのですか? (2016年4月4日 23時) (レス) id: 301a2e1b49 (このIDを非表示/違反報告)
雪星(プロフ) - あおあおさん» あおあおさん、はじめまして!コメありがとうございます!有り難いお言葉、嬉しいやら恥ずかしいやら…(≧▽≦)なるべく早く続編公開できるように頑張りますので、少々お待ちください(>_<) (2016年4月2日 22時) (レス) id: 1f6d2a7be2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雪星 | 作成日時:2016年1月27日 19時