検索窓
今日:7 hit、昨日:4 hit、合計:23,850 hit

そのに。 ページ2

重い扉に全体重をかけ押し開けると、中は当分掃除されていないのか、大量のホコリが舞った。

「コホコホッ……ほこりくさー!」

夕暮れの納屋に入る光はごくわずか。
せき込みながら足を踏み入れると、辺りは暗く、どこになにがあるのかすら確認できない。

そのためか、若干の妖気が漂っているような、なにか異様な雰囲気を感じた。


ガタリ、
 

その時また、物音がした。

先ほどよりも大きなそれが、納屋に入ったことで音源との距離が近づいていることを物語っていた。


「きゃッ…………なに?」


思わず肩を震わせて恐る恐る振り返ると、そこには……。


「め………ィ……チャ……」


折れた首を垂らし、青く目を光らせてこちらを凝視するフランス人形の姿。

なんとそれが唇を動かし、芽衣の名を呼んでいたのである。


「ひッ――――――……!」


途端に冷たいものが背筋を伝い、冷や汗がどっと吹き出る。


逃げなきゃ逃げなきゃ逃げなきゃ逃げなきゃ――――。


声にならない悲鳴を上げながら、笑う膝を無理やり動かして外に出ようと駆け出した。

やっとの思いで扉を半ば体当たりするように押し開ける。

光が射す。

その光に安堵する余裕もないままに外へ飛び出した。


「あッ、芽衣!」


納屋から出た途端、芽衣の瞳に映ったのは母の姿。

「お母さん!」
 
それに安堵して、芽衣はたまらず母に抱きついた。
 

「ちょっともう、探したのよ?こんなところで何してるの、納屋に入っちゃいけないって言ってるでしょ?」
 
「ごめんなさいお母さん、でも! でもね! さっき人形がね……!」
 

人形?と怪訝そうに首をかしげた母は、芽衣の指差す納屋の方を振り返る。

「しゃべったの! 私の名前、呼んでて……ッ!」

それを聞いた母は、何バカなこと言っているの、と呆れたような顔をして、少し開いたままの納屋の扉を閉めると、パンパンッと手を打った。
 

「はいはい、ご飯にしますよ」
 

その母の様子に腑に落ちずに、芽衣は不満を顔に表した。

絶対に変だ、あの人形は確かに私の名を呼んでいた。
そう心の中で確信してから、いつのまにか歩きはじめていた母の背中を慌てて追いかけた。

そのさん。→←そのいち。



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.7/10 (110 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
21人がお気に入り
設定タグ:オリジナル , ホラー   
作品ジャンル:ホラー, オリジナル作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

退屈な日常。(プロフ) - 途中で泣いてしまった...っ(´;ω;`) 文才分けてくださ(( (2014年10月1日 18時) (レス) id: 62c9b4f07d (このIDを非表示/違反報告)
8927(プロフ) - 文章力ヤバイですね!思わず引き込まれてしまいました。最後はハッピーエンド(?)でよかったです! (2014年7月2日 22時) (レス) id: 7fc28f0c24 (このIDを非表示/違反報告)
まーさん(プロフ) - ペンタブでしたかっそうですよねっ、ペンタブなら上手な方ですよ!(笑)イラストのうまさでカバーできてますw (2014年6月10日 22時) (レス) id: ae5c5ba8de (このIDを非表示/違反報告)
ゆず(プロフ) - いおんさん» 絵がうますぎですっ((((;゚Д゚))))神ですねっっヽ(゚∀。)ノ (2014年6月10日 19時) (レス) id: d2f212b3a4 (このIDを非表示/違反報告)
妙子(プロフ) - お人形がおばあちゃんで守ってくれてたって終わり方が好きです♪素敵なホラーありがとうございます☆ (2014年6月10日 9時) (レス) id: 30085790ce (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:いおん | 作者ホームページ:ないです  
作成日時:2014年5月28日 22時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。