守るべき存在 ページ9
＊01＊
(降谷side)
『…A、』
初めてその少女の名前を呼んだ。
知らなくていい世の汚れを知りすぎた、
幼気な17歳の少女は…
『っ…』
またすぐに、目に涙を溜めた。
＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿ 守らないと。
「降谷さんっ」
「…風見か。」
昨夜と、そして今朝の出来事を頭に浮かべていると
警視庁から出向いた風見が、資料を持ってこちらへ来た。
「古川令の遺体遺棄事件についてですが…」
「…あぁ、」
昨日の今日とで、あらゆる報道機関がこの闇の深い事件について言及している。
現在進行形で今、警察が船頭に立って、加害者、被害者諸々の血縁関係や経歴を調べ上げている。
「身寄りの無い子どもを引き取っては、自分の財産のため犯罪に手を染めさせる……極悪非道な女だな。」
「これが、引き取られた少年達についての資料です。」
「……」
渡された資料を、流し程度に読み上げた。
決して多くない情報量から、
肉親のいない彼らの空虚な過去を悟った。
「亡くなった古川令と、昨日の彼女…奥村Aの二人は、生まれて間もなく両親が他界しています。」
「…そうか」
親の愛情を知らないまま、彼らは大人になった。
「古川令…か。」
『令くん…』
おそらく、特別な感情があったのだろう。
同じ名前だから、という訳ではないが
彼女の事を考えると、やるせない気持ちになる。
でも、悲しいことに
彼の死がなければ、彼女が地獄のような日々から抜け出すこともなかったんじゃと考えると…
この世は不条理だと、つくづく思う。
「…あの子は？」
「はい、部下が今、車で送っています。」
「そうか。ありがとな、風見。」
視野に入れていたとはいえ、
まだ年若い少女を、自分の家で保護することになるとは思わなかった。
これから、僕は彼女を守りつつ
１つ屋根の下、生活をしていく。
" A "
たくさん名前を呼んであげよう。
少しでも、それが彼女にとっての希望となるように。
地獄のどん底にいた彼女が、
いつか、自立して…本当の大人になるために。
家族愛と取って代われるような愛情を、身につけられるまで…
それまでは、誠心誠意を尽くさないとな。
何度も何度も、名前を呼ぼう。
命をかけて守るべき
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juno108(プロフ) - とっても面白いです!続きがすごく気になります！ (2020年5月20日 13時) (
レス) id: 73960369a7 (このIDを非表示/違反報告)
さち - おもしろかったです。続きが早く読みたいです。よろしくお願いします。 (2019年2月11日 21時) (レス) id: 70b86fd223 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぴこ | 作成日時：2019年1月13日 2時
