【募集企画】柞吹学園【小説】 (ページ3)

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第3話【早く来すぎた】折目美扇視点ページ3

まだ誰もいない教室に、私が一人。
私は決して交友関係が狭い訳ではない。いや、むしろ広い方だと自負している。

朝方の誰もいない教室は、清々しい朝日と共に謎の虚しい心境まで作ってしまうという威力をもっている。何故だろう。

そう、今日は入学式。長きに渡る休みも今日で終わる。そんな日に、心が踊らない者がいるだろうか！

そんなわけで早々と生徒会役員でもないのに登校して、意気揚々と教室のドアを開け、現在に至る。

「……皆、私と同じ心境ではないのか？」

ポツリと呟いた言葉は、虚しく響くだけだった。

仕方がないので、傍に置いた竹刀と防具一式を点検しながら待つことにする。
今年も、入学式(新入部員獲得チャンス)がやって来た。

入学式が終わったら、すぐに行動に移ろう。

防具の点検も終わり、窓をぼーっと眺める。人生で一番無駄な時間といえば、正に今だろう。

過去の無駄な時間候補『一日中布団にくるまって何もする事なく過ごす』や、『友達と遊びに行ったのにはぐれて一人ベンチに座って過ごした』などよりも、格段に今が無駄だ。

そういえば、今年の入学式は何をするのだろう。去年の茶番は……一週間腹筋が筋肉痛になった。

入学式は、ほぼ生徒が騒ぐ為と言っても過言ではない。普段のぶんまでどんちゃん騒ぎをし、羽目を外す輩もいる。

忘れもしない。あの伝説の議論『我が校の教師は誰がカツラで誰が植毛か』という議論。

あの時は私も割と大騒ぎしたが、あとあと冷静に考えれば何とくだらない話題で盛り上がったのだろう。

責任は生徒会が取ってくれたらしい。ありがとう生徒会。例を言うぞ生徒会。

あれこれ妄想していると、誰もいない教室というのも案外いい物だと思えてくる。

訂正しよう、人生で一番無駄な時間は『お菓子全種類制覇選手権』を開催した時間だった。