わかってる…… ページ19
再発との診断を受けてからしばらくは
さすがの雅紀もショックを隠しきれず
落ち込んでいたものの
あれから数ヶ月たった今
頭の中の厄介者は鳴りを潜め
まったく進行した様子はなかった
とはいえソイツは消えてなくなったのではなく
そこに居座ったままなのだから
当然手放しで喜べるわけではないのだが
それでも雅紀にしてみれば
ほっとできる材料の一つではあった
「社長 少し休憩なさいませんか？」
翔がコーヒーを雅紀に差し出した
雅紀は不服そうな顔でそれを受け取ると
「仕事中だからしょうがないんだろうけどさ
二人でいるときはさ
その“社長”ってヤツやめない？」
そう言って一口飲むと
ぷうと頬を膨らませて手元の書類に目を落とす
小さな声でブツブツと何やら文句を言いながら
バンっと大きな音をたたて判を押す
翔の左の眉がピクリと反応する
「そこはケジメです
仕事中は二人きりだろうと何十人でいようと
キチンと線引をし
立場をわきまえて頂かないと困ります
それにその様にいい加減な目の通し方で
ちゃんと内容は把握されていますか？
我々の会社だって
どこに落とし穴が潜んでいるか……
他人事ではないのですよ
代表である社長が最後は責任を持って
然るべき判断と決断を──」
このままでは延々説教されるのではと察した雅紀
「ハイハイ だってこの書類もう
しょおにいが確認してくれて
“櫻井”ってハンコが押してあるんだから
大丈夫でしょ？
信頼と実績の“櫻井”印なんだから……」
書類をヒラヒラさせながら翔に突き付ける
「社長っ！！」
翔はギロリとにらんだものの
自分でもわかっていた
雅紀が冗談で言っていることなんて……
何度か経験したことのあるこの苛立ち
雅紀は悪くない
ただの妬心 やっかみ ジェラシー
仕事だ？線引だ？立場をわきまえろ？
俺のことじゃないか！
ブツブツと雅紀に文句を言いながら
翔の胸の中にはぐるぐる渦巻くものがあった
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43(プロフ) - 大変お待たせして申し訳ありませんでした。見捨てることなくページを開いてくださった皆様、ありがとうございました。亀更新が続きますが、完結目指してカーソルはノロノロと進んでいっております。最後までお付き合いいただければ嬉しいです。よろしくお願い致します。 (2021年5月12日 21時) (
レス) id: eb8e95ff3b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：43 | 作成日時：2021年5月12日 21時
