遠回り ページ18
雅紀と出会った頃をひとしきり思い出しながら
翔の隣で窓の外をぼんやり眺めていた潤
視線を外し後ろを振り返り
雅紀が眠っていることを改めて確認する
「まーがさ 友達になりたいって
そう言ってくれなかったら今の俺は
なかったんだろうな……」
信号が赤に変わり
翔は雅紀を起こさないよう
丁寧にブレーキを踏んだ
「まーの寝顔って
なんでこんなに平和なのかねぇ？」
半開きになった口もと
小さく上下する胸
雅紀のほうが身体は大きいのに
無防備なその姿は
幼い子供のようでつい微笑みたくなる
「ふふっ
昔っから変わらないんだよなこの寝顔」
バックミラーを覗く翔は眉を下げ愛おしそう笑うと
青信号を確認し優しくアクセルを踏んだ
「そういえば剛さんにはびっくりしたなぁ
潤は前から話聞いてたの？」
高校卒業後は堂本のすすめもあり
潤は大学に行きながら探偵の修行をし
あっという間に事務所内のエースになっていた
そして
はじめからそのつもりだったのか
潤の働きっぷりを見てそう決めたのか
堂本はさらにとんでもないことを言い始めた
明日から潤が金田一探偵事務所の所長だと
堂本はかねてから挑戦し続けてきた
司法試験にやっと合格
これから念願の弁護士になる
だから探偵業は潤にすべて譲ると言い残し
滝川法律事務所という大手の事務所へと
とっとと移籍を果たしたのだ
「師匠はどうやら弁護士になりたかったから
試験に受かるまでの間
探偵はつなぎだったらしいよ……
まったくびっくりしちゃうよ
いきなり明日から君は所長だ！なんて…」
潤はあたかもついさっき告げられたというような
表情で深くため息を付きながら
参ったよとゆっくり頭を振った
「それが今じゃ
業界トップの人気探偵事務所所長
さすが剛さん見る目あるよ
それにあの人らしい
やりたいことに猪突猛進
ちょっと誰かに似てる……」
翔がちらりとバックミラーに目をやると
潤もちらりと振り返り
ふたりでふふふと笑う
あとは左折をすれば雅紀の会社に到着
しかし翔はそのまま直進した
「翔さん？」
「もう少し寝かしてやろう
嬉しかったんだろな
久々にいい顔して寝てる……」
ほんの数分の遠回り
翔の雅紀を想う気持ちを
潤はひしと感じずにはいられなかった
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43(プロフ) - 大変お待たせして申し訳ありませんでした。見捨てることなくページを開いてくださった皆様、ありがとうございました。亀更新が続きますが、完結目指してカーソルはノロノロと進んでいっております。最後までお付き合いいただければ嬉しいです。よろしくお願い致します。 (2021年5月12日 21時) (
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作者名：43 | 作成日時：2021年5月12日 21時
