〃＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ ページ14
最初は偶然だった
数ヶ月前のこと
彼は忘れ物に気付き教室へ戻らねばと
慌てて階段を駆け上った
すれ違いざまに肩が触れ
相手がバランスを崩し三段程踏み外し転落した
大変なことをしてしまったと振り返ると
その相手が雅紀だったことに気がついた
階段下で足をさすりしゃがみ込む雅紀
瞬時に頭の中に様々なことが巡る
彼の父親の会社はいま危機的な状況にあった
それは相葉グループが新規参入してきて
シェアを広げ始めた事が
不調の始まりだったらしい
そのせいか両親のいさかいが増え
自分にも辛く当たられることが増えた
父親の日々生気のなくなっていく様
母親の増え続けるグチ
ぶつけようの無い自分のストレス
“ザマァミロ”
自分の中に過ぎった言葉に驚いたものの
雅紀のその痛みは自分を苦しめたことへの報いだ
正当な天罰なのだと
そのまま階段を駆け上がった
ドキドキした
見捨てて来てしまったことへの後悔は
時間がたつに連れ薄れていった
その日は久しぶりに気分が良かった
母親の生産性のない会話にも
うんうんと優しく頷くことができた
それからは歯止めが効かなかった
雅紀に何か仕掛けるたびに
何とも言えない高揚感に包まれ
罪悪感はさらに薄れていった
わかっていたのに
酷いことをしているのは自分だと…
ところが雅紀は
自分が悪いからと甘んじて受けていたと
その上注意もせず見過ごしてきた事に対して
悪かったと頭を下げた
急に自分が情けなくなった
こんなにも純粋な人に
自分は何をしてきたのだろう
許してほしいなどと虫のいいことは言えない
それでも謝らさせて欲しいと
彼は深々頭を下げた
どうする？と雅紀に問えば
じゃあお互い様でいいんじゃない？
なんて返事が帰ってきた
お互い様？なにが？どこがお互い様？
潤の頭の中は混乱しっぱなしだったが
何だか事が収まったので
疑問を残しながらも
潤も渋々同意せざるを得なかった
その後
雅紀はこの件に関して公にすることもなかった
しかし彼は学校を去っていった
両親と話し合い
体裁ばかりで負担をかけていた現状を
やっと抜け出す覚悟ができたと
もっと負担の少ない学校へと転校していった
“探偵みたいだね”
彼のことを突き止め
和解したその後雅紀はポツリと呟いた
潤の耳にもその言葉は届いたが
その時は特に気にもとめていなかった
そんなこともあって
雅紀と潤はすっかり打ち解け
一つ学年が上がって
その関係はより強いものになっていた
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43(プロフ) - 大変お待たせして申し訳ありませんでした。見捨てることなくページを開いてくださった皆様、ありがとうございました。亀更新が続きますが、完結目指してカーソルはノロノロと進んでいっております。最後までお付き合いいただければ嬉しいです。よろしくお願い致します。 (2021年5月12日 21時) (
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作者名：43 | 作成日時：2021年5月12日 21時
