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友達は相変わらずあまり多くないけど、それでも佐藤先輩と、富永先輩の話はよく聞いた。
別れるときは、もっとショックを受けるかなって思っていたけど、正直そんなに生活に変化はなかった。大学やサークルで忙しい佐藤先輩とは、それまでも頻繁に会っていたわけじゃなかったし。わたしは受験で必死だったこともあって、別れるってこういうことなんだなあ、って客観的にそう思ったことを覚えている。
でも、大学に入ったら途端に寂しくなって、お二人に会う前のもさもさの自分に戻った気分。知らない土地、知らない人たち、今までとは違う見られ方。すべてがわたしにのしかかってきて、それを受け流して時間を過ごした。うまくできていたかはわからない。
二人がYouTubeを始めたことも大きな事務所に所属したことも、その後の飛躍的な活躍も把握している。自分のことのように嬉しくて、なにかあればひっそりとお祝いのケーキを食べたりして。
あのころは漠然としていた自分の将来も、大学で過ごすうちに見えてきて、普通に就活し普通に就職した。その生活のなかには必ず、水溜りボンドが。
そして。
会社がつぶれる、一週間前、渋谷のコーヒーショップ。
『…よし、』
自分の好みにカスタマイズしたカフェオレを持ってお店を出ようと透明なガラスの自動ドアへ向かう。混んでなくてよかった、貴重なお昼休憩だし、
長い髪を揺らして、背筋を伸ばして歩く。
めちゃくちゃネガティブなくせに楽天的なわたしは、お気に入りの自分でいることで割と楽しく毎日を過ごせることに気が付いた。見た目をキレイにする理由は、わたしの場合は楽しく過ごす為で、自分だけの為。
長く伸ばした髪は、先輩二人に褒められたからだけど。
スッ、と開いた扉の向こうに人影が見えて左によける。店内に入ろうとしていた男性は、うつむきがちで顔が見えない。
『え』
わたしがよけていることに気が付いた男性は、入口でそわそわしたあと、スマホをとりだして去っていく。
どこか心の奥底で、この人佐藤先輩じゃないか、って思って。挨拶くらいできる。と思っていたけど、挨拶もさせてもらえなかった。
わたしを見つけて、お店に入ろうとしていたのに避けるように去っていってしまった。
その事実はさすがに堪えて夜、すこし泣いた。
つづく
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りい(プロフ) - 個人的に気持ちに余裕がなくて趣味を疎かにしていて、久しぶりに占ツクに来て、まっさきに学パロを拝見しました。社長室さんの小説、やっぱり好きです。素敵な作品を、癒しをありがとうございます！ (2019年9月23日 4時) (
レス) id: 23552ed598 (このIDを非表示/違反報告)
社長室(プロフ) - ちひろさん» コメントありがとうございます！素敵な感想、本当に嬉しいです〜ノリノリで描いていったというよりは、すこし苦しみながらできあがっていったので、幸せを感じていただけたことを心から感謝します。ひみつのほうもぼちぼちやっていますのでまた読みにいらしてください〜 (2019年7月27日 22時) (レス) id: 37f3407064 (このIDを非表示/違反報告)
ちひろ(プロフ) - 完結おめでとうございます！今更ながら、ひみつからきて読ませていただきました。もどかしい青春が詰まっていて、社長室さんの描かれるカンタくんととみなが先輩がたまらなく大好きです。とてつもない幸せに包まれました。ありがとうございます。 (2019年7月26日 11時) (レス) id: 04f6d975f4 (このIDを非表示/違反報告)
社長室(プロフ) - じょん、さん» コメントありがとうございます！学パロで終わらせておけばよかったのに大風呂敷をひろげて２に続きまして、リアルタイムで呼んでくださった方にはご迷惑をおかけしました…！短編のほうは地道にやりますので、またお暇なときにでも覗いてやってください！ (2019年7月5日 0時) (レス) id: 37f3407064 (このIDを非表示/違反報告)
社長室(プロフ) - 名無し9253号さん» お付き合いくださりありがとうございました！ (2019年7月5日 0時) (レス) id: 37f3407064 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：社長室
| 作成日時：2019年6月5日 11時
