2 ページ44
『…うぅ』
カ「…楽しかったなあ、高校。」
『…ん、』
カ「卒業式なのにさ、なんか結婚式な気持ち」
『…へ?』
あまりにも素っ頓狂なことを言い出した先輩に、思わず顔を上げる。なれたとはいえ、相変わらず突飛なひと。
結婚式って、…さすがにその発想はない。
カ「静かなところでさ、気持ちを再確認するわけよ」
目尻の涙を拭われて片目をつむると、先輩がふって笑う音がした。
カ「かわいい」
優しい先輩の言葉に、いろんな気持ちが混ざってまたうるうるしてきた。
卒業するのは先輩なのに、先輩は悲しそうじゃなくてただ、前を見てる。わたしと、過ごすこの先を、
『先輩、大学頑張ってね、楽しんでね、』
心からそう思って言ったのに、先輩は急に意地悪な顔をした。
カ「うん、…新しい出会いがあるかもな、」
『・・・・・・・・そうだね、…そのときは、…しょうがないよ』
きっと言葉の通り、新しい出会いがたくさんあって、いま意地悪されたようにわたしより素敵な人と、もしかしたら、って思う。先輩はもちろん冗談で言ってくれたけど、現実は、どうなるかわからない。
その時は、しょうがない、って思う。それ以上でもそれ以下でもない。
本当は、考えるのも嫌なだけかもしれないけど。
カ「わたしがいるのに!って言ってよ!しょうがないってなに!?」
すん、って力を抜いたわたしに、先輩はおおきな声を出した。
『だって、』
口調は怒っているのに、優しく頬を撫でられてそこに擦り寄った。目を伏せて、言い訳を考えていると、内緒にしていたはずのことを急に切り出されて、目を見開いた。
カ「おれまんずに聞いたんだからね!クラスのやつに告られたって!」
『いっ、今はそれかんけーないでしょ!』
カ「黙ってることがショックだった!」
『…っそれは、ごめんなさい、…断ったよ、ちゃんと、』
カ「うん。じゃあAのスマホかして、」
『お、おとこの連絡先なんかまんずくらいしかないよ、』
カ「写真撮るからロック画面につかって」
『えっ』
カ「えっダメなの」
『そういうキャラじゃない〜〜〜〜〜〜〜無理〜〜〜』
カ「俺はやんないけど」
『ひど!ズル!いっつもずるい!』
笑う先輩と目尻の赤いムッとしたわたしの写真は、仕方なく壁紙にした。
これをお守りに、高校生活最後の一年を、頑張ろうと思う。
おわり
173人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
社長室(プロフ) - じゅんりさん» お気遣い本当にありがとうございました。更新は未定ですが、眠っている短編からアップしていこうと思っています、その時はよろしくお願いします。 (2020年1月8日 22時) (レス) id: 4147535b1c (このIDを非表示/違反報告)
じゅんり(プロフ) - お気づきになったみたいで良かったです(^^)社長室さんの書く作品大好きなので、また作品上がるのを楽しみにしてます(^^)! (2020年1月7日 10時) (レス) id: a9d9714e3d (このIDを非表示/違反報告)
社長室(プロフ) - じゅんりさん» コメントありがとうございます。インスタには載せておりませんので無断転載になります。じゅんりさんのコメントでアカウントも把握することができました。ありがとうございます。放置ぎみになっていたところにわざわざコメントいただいて感謝です。出来る限り対処します (2020年1月6日 23時) (レス) id: 4147535b1c (このIDを非表示/違反報告)
じゅんり(プロフ) - 社長室さん初コメ失礼します。インスタに、こちらの学パロ載せたりしてませんよね?無断転載されていると思います。アカウント名など、もしお知りになりたい場合はお教えします。私もいち書き手、いちファンとして許せないので不適切アカウントとして報告しておきますね (2020年1月3日 22時) (レス) id: 035108e004 (このIDを非表示/違反報告)
社長室(プロフ) - おかきさん» コメントありがとうございます!終わるとみせかけて終わりません、すみません!よろしければもう少しお付き合いください〜 (2019年5月28日 13時) (レス) id: 37f3407064 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:社長室 | 作成日時:2019年3月25日 23時