学パロ

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進級してすぐに富永先輩から、カンタ誕生日だったけど、って言われてムンクみたいに叫んだ。たしかそうだった気がする。プレゼントはおろか、おめでとうも言わないで、なんと失礼な！
焦って、でもわたしからなにか貰ってもお返しめんどくせ、って思われるかもしれない、ってうじうじして用意できずにいて。
今年は渡すのあきらめようかな、って半分くらい逃げる気でいたわたしは、職員室から佐藤先輩がでてくるのを見て、勇気を出して声を掛けた。


カ「おつかれ、A帰るの？」



大きな部活用のバックを持った先輩は、初めて会ったときみたいに爽やかに笑う。そのときの笑顔が偽物で、背筋が凍った。先輩のつくった笑顔で距離感じて、悲しくなって。
去年の夏一緒にいたときは、目は笑ってなくて口だけで笑ったり、意地悪ばっかり言ったり、ズルだったり。そういうところを見せてくれていたのに、今は、いい人の顔をする。
先輩にとって特別じゃなくて、その他の一人になっちゃったのかもしれない、って思ってぐるぐる、おなかの底が気持ち悪くて。

自分が自分らしくいることも、先輩のことが好きな自分も、どっちも失いたくないって思った。いまさらだし、遅くなっちゃったけど、プレゼントを渡すことできっかけになれば、って。


次の日。
タイミングを見ながら佐藤先輩を探していたら、結局放課後になってしまった。先輩はもちろん部活で、仕方なく体育館にむかう。部活の邪魔はしたくないから、ばれないようそっと裏から覗くと、ちょうど先輩がシュートを決めるところだった。胸にキューピットの弓矢が刺さって卒倒しそうになる。ハートついてるやつ、もう好きなんだから必要ないんですけど…。
自分がスポーツするのは嫌いだけど、先輩がバスケしているところを見るのは、すごくいい。だっていつもの倍かっこいい。

えっと、
一緒にお出かけしませんか、欲しいものがあれば買ってあげます

…何様？下手すぎる。
誘いたいけどいい言葉が思い浮かばずに唸る。


遅くなってすみません、よかったらプレゼントをあげたいので付き合ってくれませんか？


どこに？って言われそう…


カ「…やっぱAだ」


『ひぇ！』


体育館の大きい扉の外のコンクリの階段に腰掛けていたわたしは飛び上がって驚いた。先輩は呆れたような目で、上から見下ろしてくる。





つづく

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