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カ「帰ろうとしてただろ」
『…してました』
富永先輩にはたまたま会ってお渡し済みだったので、佐藤先輩に渡して終わりだ、っ思っていたけど、正直忘れてた。手作りは少し、はばかられて駅ビルに買いに行った。きれいに包まれたチョコ。冬は思考も鈍る。
カ「ひっど!トミーは貰ったって聞いたんだけど!」
『すみません、…えっと、お世話になってます、の気持ちです』
恋だったんだけど、ちょっといまそれどころじゃないので、富永先輩と同じもの。佐藤先輩はすごい人だから、隣に行けるよう追い付きたいけど、
カ「…ありがと。…ねえこれトミーと一緒?」
箱をまじまじと見つめてから裏返したり横からみたりして、眉間に皺を寄せて先輩は唸った。
『そうですよ、あの、お二人には、本当にお世話になったので、』
暗い気持ちが、心に影を落としている状態でごまかすように笑った。
カ「…お世話に、」
『はい、』
カ「…なった、…過去形?」
『…え、』
カ「なんかAが離れていっちゃうみたい」
うつむきがちにそういった先輩は、長いまつげが西日に照らされて影ができていた。シャープな横顔の顎にかけてのラインがきれい。拗ねたようにすこしだけ、唇を尖らせて話すところや表情が愛おしくて、胸が痛いくらいドクドク鳴る。
かわいい見た目に騙されてはいけない。目の前の男はただの17歳じゃない。この人と一緒にいるためには、成長し続けなければならないって思ってお腹の底がうずうずする。
やるしかない。
『…離れないです、けど、』
カ「けど、なに?」
『こっちがお世話してやる、くらいの気持ちでいますんで!』
ぐ、って喉がなるくらい力を込めた言葉に目を丸くした先輩は、一瞬の間の後、わたしの好きなくしゃくしゃの顔で笑った。
カ「A、かっこよすぎ、」
なはは、って笑う先輩に合わせて笑顔を作ってみるけど、冗談でも軽い気持ちでもない結構大きな決意、みたいなものだったから、体はガチガチに固まっていた。
その後、近所の幼馴染がわたしの高校に入るとかで、話を聞いた流れで一緒に勉強部をつくって、わたしの部屋で勉強したりして。すこし、成績が伸びて無事二年になった。
でも、一緒に学校行こうね、って言ったら割と嫌な顔をされてショックだった。
小さい頃、いつもお米つぶをほっぺにつけてたくせに!生意気だよ、まんず!
つづく
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社長室(プロフ) - じゅんりさん» お気遣い本当にありがとうございました。更新は未定ですが、眠っている短編からアップしていこうと思っています、その時はよろしくお願いします。 (2020年1月8日 22時) (レス) id: 4147535b1c (このIDを非表示/違反報告)
じゅんり(プロフ) - お気づきになったみたいで良かったです(^^)社長室さんの書く作品大好きなので、また作品上がるのを楽しみにしてます(^^)! (2020年1月7日 10時) (レス) id: a9d9714e3d (このIDを非表示/違反報告)
社長室(プロフ) - じゅんりさん» コメントありがとうございます。インスタには載せておりませんので無断転載になります。じゅんりさんのコメントでアカウントも把握することができました。ありがとうございます。放置ぎみになっていたところにわざわざコメントいただいて感謝です。出来る限り対処します (2020年1月6日 23時) (レス) id: 4147535b1c (このIDを非表示/違反報告)
じゅんり(プロフ) - 社長室さん初コメ失礼します。インスタに、こちらの学パロ載せたりしてませんよね?無断転載されていると思います。アカウント名など、もしお知りになりたい場合はお教えします。私もいち書き手、いちファンとして許せないので不適切アカウントとして報告しておきますね (2020年1月3日 22時) (レス) id: 035108e004 (このIDを非表示/違反報告)
社長室(プロフ) - おかきさん» コメントありがとうございます!終わるとみせかけて終わりません、すみません!よろしければもう少しお付き合いください〜 (2019年5月28日 13時) (レス) id: 37f3407064 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:社長室 | 作成日時:2019年3月25日 23時