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漠然と、このままじゃいけないって思っていたとき、佐藤先輩が冗談まじりに、ネタを書いてみようかなって言って笑った。体育祭のあと、すぐくらいだったと思う。横顔を見て瞬時に本気だって気が付いて、もしかしたらもう書いているかも、とすら思った。わたしの座る屋上の床のコンクリートがどろどろ、解けていくように感じて慌ててしゃんと立って、でも嫌な汗が止まらない。また、距離が、
お二人の隣に立って見劣りしないようになりたい、って思って始めた高校デビュー的なことが、いつのまにかわたしを無くしていて。
いやだって思った。こんな自分嫌いだ。
そう思ってすぐ、少しずつ、そこそこの気持ちで自分を動かすことを辞めた。クラスの子が、佐藤先輩と富永先輩どっちがかっこいいとか話しているのを聞こえないふりをして。本当にしたいことを真剣に考えて、冬を過ごした。
自分に正直に生きることは難しい。冬は寒くて苦手、の一点張りで急に付き合いの悪くなるわたしを、黙って見守ってくれたのは富永先輩と佐藤先輩のみで、クラスの子には陰口をたたかれた。出る杭は打たれるじゃないけど、それに近い感覚かな。はみだしもの、みたいな扱い。
それでも心震わすものを探すわたしは、真剣だったから、あまり気にならなかった。
三学期が始まって、塾の成績が上がらなくて途方に暮れていた。そのせいでテンションがめっちゃ低くてあがんなくて、普通に外は寒いし。寒すぎて着込んでいるせいでのろのろ動くから余計に寒いし。一年で一番寒い2月。夏にならないかなーとか思いながら帰りの支度をする。夏は楽しかった。もはや夢だったんじゃないか、ってくらい青春してたし。
…佐藤先輩、元気かなあ。
先輩が顔をくしゃってさせて笑うところを想像して、ため息。そのままいつもより重いリュックを背負って教室をでると、廊下で大きな部活のカバンを持った佐藤先輩が、壁に寄りかかって誰かを待っていた。
なんとお相手はわたしで、そのまま屋上に連れていかれて、チョコを催促されて、ああ今日バレンタインじゃん、って思いだしたのである。
はい、回想終了。
つづく
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社長室(プロフ) - じゅんりさん» お気遣い本当にありがとうございました。更新は未定ですが、眠っている短編からアップしていこうと思っています、その時はよろしくお願いします。 (2020年1月8日 22時) (レス) id: 4147535b1c (このIDを非表示/違反報告)
じゅんり(プロフ) - お気づきになったみたいで良かったです(^^)社長室さんの書く作品大好きなので、また作品上がるのを楽しみにしてます(^^)! (2020年1月7日 10時) (レス) id: a9d9714e3d (このIDを非表示/違反報告)
社長室(プロフ) - じゅんりさん» コメントありがとうございます。インスタには載せておりませんので無断転載になります。じゅんりさんのコメントでアカウントも把握することができました。ありがとうございます。放置ぎみになっていたところにわざわざコメントいただいて感謝です。出来る限り対処します (2020年1月6日 23時) (レス) id: 4147535b1c (このIDを非表示/違反報告)
じゅんり(プロフ) - 社長室さん初コメ失礼します。インスタに、こちらの学パロ載せたりしてませんよね?無断転載されていると思います。アカウント名など、もしお知りになりたい場合はお教えします。私もいち書き手、いちファンとして許せないので不適切アカウントとして報告しておきますね (2020年1月3日 22時) (レス) id: 035108e004 (このIDを非表示/違反報告)
社長室(プロフ) - おかきさん» コメントありがとうございます!終わるとみせかけて終わりません、すみません!よろしければもう少しお付き合いください〜 (2019年5月28日 13時) (レス) id: 37f3407064 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:社長室 | 作成日時:2019年3月25日 23時