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『いや、だから付き合ってないです…』
二学期が始まり、また教室の隅で静かにお笑い雑誌を読める、って思いながら登校したわたしを待ち受けていたのは、数多の佐藤先輩ファンによる呼び出しである。
全く予想していなかった事態に、最初は何が自分に起きているのか理解できずに唖然とするばかりで。
貴女も?そこの貴女も?隣の隣のクラスの貴女も!?
始業式を含めた9月最初の一週間は、一人でふらふらしてると知らない人に佐藤先輩と付き合っているのか、と声を掛けられるので、怖くて廊下は歩けなくて。移動教室はほぼダッシュ。
告白したわけじゃないし、むこうも彼女として連れている感じではなかった。富永先輩もそうだったし。面倒なことになったら佐藤先輩に迷惑がかかるので、いちいち否定して、なんかこっちが傷付いて、悲しくなって。
なあんだ、やっぱり違うんだ、って言ってきゃぴきゃぴかえっていく女子たちの背中を、ぼーーーっと眺めるのももうイヤだった。
そんなとき、新学期早々指導室に呼ばれた富永先輩にばったり会う。わたしは家庭科室に用があって、職員室の近くを歩いていた。まさかと思うけど、先輩は家庭科室でさぼるつもり?
ト「おう、久しぶり、」
先輩はちょっと機嫌悪そうにぺったぺった、って歩いてくる。目つきはいつもの三倍悪くて、動きは三倍遅い。不自然に黒いさらさらの髪が、ふわふわ揺れる。
『お久しぶりです、ねえ、なんで屋上来ないんですか!』
佐藤先輩と付き合ってる?攻撃、よりもわたしを苦しめること、それは富永先輩が屋上にこないこと。昼休み、一学期みたいに屋上に行っても富永先輩がこない。困って、連絡してもなにかしら理由をつけて断られて。昨日なんか、屋上までどう行くかわすれた。とか言う!見え透いた嘘で断るなんて、どうかしてる!って怒るわたしに、富永先輩はあいまいに笑うだけだった。
ト「え、だって俺お邪魔だろ」
『はあ!?なんで!』
半分キレながら詰め寄ると、眉間に皺を寄せた先輩がぎろ、ってわたしを見下ろした。
ト「あん?だって付き合ってんだろ。カンタと、」
『だから!付き合ってませんてば!!』
もう、なんでみんなわかってくんないの!といらいらしながら富永先輩に詰めよると、背後からトトト、って誰かが早歩きする音が聞こえて振り向いた。
ト「…え」
『…お、おばけ?』
ト「んなわけねえだろ、真昼間にお化けでねえだろ」
つづく
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社長室(プロフ) - じゅんりさん» お気遣い本当にありがとうございました。更新は未定ですが、眠っている短編からアップしていこうと思っています、その時はよろしくお願いします。 (2020年1月8日 22時) (レス) id: 4147535b1c (このIDを非表示/違反報告)
じゅんり(プロフ) - お気づきになったみたいで良かったです(^^)社長室さんの書く作品大好きなので、また作品上がるのを楽しみにしてます(^^)! (2020年1月7日 10時) (レス) id: a9d9714e3d (このIDを非表示/違反報告)
社長室(プロフ) - じゅんりさん» コメントありがとうございます。インスタには載せておりませんので無断転載になります。じゅんりさんのコメントでアカウントも把握することができました。ありがとうございます。放置ぎみになっていたところにわざわざコメントいただいて感謝です。出来る限り対処します (2020年1月6日 23時) (レス) id: 4147535b1c (このIDを非表示/違反報告)
じゅんり(プロフ) - 社長室さん初コメ失礼します。インスタに、こちらの学パロ載せたりしてませんよね?無断転載されていると思います。アカウント名など、もしお知りになりたい場合はお教えします。私もいち書き手、いちファンとして許せないので不適切アカウントとして報告しておきますね (2020年1月3日 22時) (レス) id: 035108e004 (このIDを非表示/違反報告)
社長室(プロフ) - おかきさん» コメントありがとうございます!終わるとみせかけて終わりません、すみません!よろしければもう少しお付き合いください〜 (2019年5月28日 13時) (レス) id: 37f3407064 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:社長室 | 作成日時:2019年3月25日 23時