【降谷零】走り屋なんて嫌いです Ⅱ (ページ48)

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新しい家族1 ページ48

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『一！！水着忘れてるよっ』

「あ、そうだった！これ忘れたらプール入れなくなっちゃう…」

「ほら、急がないと置いていくぞ」

「あ、お父さん待って！」

五年前、長男が生まれた。名前は色々迷ったがシンプルに《一(はじめ)》にした。彼に似て少しだけ明るい髪の毛に褐色肌、目鼻立ちは自分に似ている。5歳の年長さんになった一はとても優しくて賢い子に育った。

『零さん、忙しいのに一のこと送ってくれてありがとう。助かりました』

「いいよ、仕事行くついでだ。莉子は一人で大丈夫か？」

『大丈夫。病院行くだけですから。プールのカードは担任の先生に、この着替えとタオルは一のロッカーに入れておいてあげてくださいね』

「わかった。今日は日付が変わらないうちに帰れると思う」

『ありがとう。帰宅時間も了解です。じゃあ一、零さん行ってらっしゃい』

「行ってくる」

「行ってきます！お母さん、《環奈ちゃん》」

『気をつけてね』

一は《行ってきます》と言うなり最後に自分の大きくなったお腹に触れる。それが一の日課となっていた。

現在、お腹の中には第二子である女の子を宿している。妊娠9ヶ月で間もなく臨月となり、8月が予定日だ。第二子は女の子で、彼が、季節の花の名前を付けたいということだったため、夏の花を二人で探し《カンナ》という可愛らしい花の名前を付けることにした。

今日は、定期検診のために朝イチで婦人科に行く予定で、送りができない自分は彼に一の保育園へ送りを頼んだわけだ。

そして玄関で二人を手を降って見送る。

彼は家族のことを考えて、第一線から退いた。役職が変わったことで、以前よりも家に帰ってこられる日が格段と増えた。忙しさはさして変わらないようだったが。

自分の仕事は、一がお腹の中にいるとわかった時に退職して、今は専業主婦だ。整備士の仕事はまたやりたいので、子供が小学生に上がってから彼と相談して仕事をやらせてもらおう。

約一ヶ月後にはもう一人家族が増える。

ここに至るまで楽しいことだけでなく大変なこともたくさんあったが、家族三人でここまでやってこれた。そして、微笑ましい事に一の兄になるという心構えも十分らしい。

『お父さんもお母さんも、一も待ってるから、安心して生まれてきてね…』

玄関に立ち、軽く微笑みながらお腹を撫でてこれから生まれてくる《環奈》に静かに語りかけた。