【降谷零】走り屋なんて嫌いです Ⅱ (ページ29)

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唯一敵わない人ページ29

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-降谷零 side-

莉子のわがままを聞こうと思い、やりたい事をきいたら《写真を撮りたい》というものであった。確かに莉子と写真を撮ったことは一度もなかった。普通の恋人では出来ることが疎かになったり、出来なかったりする。

不覚にも莉子も普通の付き合えば辛い思いなどしなくて済んだろうと思ってしまった。初めてのデートで、莉子の手を初めて握る。そんな思いから握っている手を更に強く握った。

赤く燃えるような紅葉を眺めつつ、嬉しそうな莉子の顔を見て自分が考えていたことを思わず口にしてしまった。すると莉子に些細な日常が幸せだからもう謝るなと怒られてしまった。初めて梨子に怒られてなにも言えなくなる。そして、《寂しくなったらもう一人の恋人と出かける》と言葉を続ける。

自分のネガティブな言葉にも嬉しい言葉を返してくれるため、自分は莉子に敵わない。

結婚生活を送るなかで、多分自分は尻に敷かれてしまうだろう。

そんな生活もいいかもしれないと静かに微笑んだ。

『すごい、沢山写真撮れました！零さん、ありがとう』

「また、出掛けたら撮ろうか」

『はい』

プライベートで写真を撮るのは何年ぶりだろうか。こんなに莉子が笑顔になるならばまた出掛けたら撮ろうと思った。そして、自分も撮りたい写真があり、莉子にお願いしてみる。

「莉子、俺も撮りたい写真があるんだが」

『うん？いいですよ。何処の写真ですか？』

「サミット明けになるが、莉子の育ての親のおじいさん、おばあさんに挨拶にいこうと思っててな。その時に四人で写真が撮りたいんだ」

『………もちろん。きっと喜ぶと思います。サミット明けですね、電話で連絡しておきます』

「よろしく頼む」

撮りたい写真とは、莉子の育ての親である祖父母との写真であった。

両親を亡くした幼かった莉子を育て上げて、以前結婚する旨を伝えるための電話をしたときに、快く許可してくれた。電話越しでも伝わる優しさに溢れた人達と写真を撮り、思い出として残しておきたいと思っていた。

その為にはまずはサミットの警備を無事に終わらせなければならないが、今は莉子との時間を大切に過ごそう。