【降谷零】走り屋なんて嫌いです Ⅱ (ページ12)

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彼女の誕生日1 ページ12

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RX-7を愛でるように指先で撫でている姿を見てまた胸が高鳴る。頑張って直して綺麗にして良かったと後ろで微笑む。それから彼の隣に立ち、車検で異常があり直した所や、修理のした箇所について丁寧に説明をした。

『以上です』

「本当にありがとうございました」

『それと鍵お渡しします。会計は店内でお願いできますか？別のスタッフが対応します』

「すみません。あ、これ、仕事が終わったら食べてくださいね。では」

ポケットの中に入れていた鍵を彼に手渡しながら会計の事を話した。再度お礼を言う彼から小さな紙袋を手渡される。不思議に思いつつ彼を見上げた。今日の彼の格好は、黒く上品な服に身を包んでおり珍しい姿だった。いつも彼から誘いを受けていたので今日は自分から食事に誘えたらと思っていたが、何処か近寄りがたい雰囲気の彼だったので結局何も言えずに見送るだけとなってしまった。

後片付けもあるため、一度紙袋を更衣室にある自分のロッカー内に片付けてから作業場の片付けを済ます。やり残した仕事はないか確認して、全ての仕事を終えれば帰ろうと思い更衣室に向かった。ロッカーをあけて、気になっていた紙袋の中身の箱を開いて確認した。そこには《happy birthday》と書かれた小さなホールケーキが入っていた。

(え……あ…今日、私の誕生日だった)

ケーキの文字を見て自分の誕生日に気づく。大人になってから自分の誕生日には随分と疎くなってしまっていたので、このサプライズケーキには心底驚いた。それよりも、誕生日は彼に教えたつもりはないのに、どうやって知り得た情報なのか気になったが考えるのをやめた。そして紙袋の底にあった手紙に気づいて封を開ける。

《誕生日おめでとう。直接ではなく手紙でお祝いする形になって申し訳ない。これから任務で暫く莉子には会えない。詳細は話せないが必ず戻ってくる。帰ったら過ぎてしまってるが改めてお祝いさせてくれ。じゃあまた連絡する。降谷零》

手紙には誕生日のお祝いと暫く会えない事が書かれていた。嬉しさと寂しさが重なりあう。その場にしゃがみこみ、彼から貰った手紙を胸に抱き彼の無事を強く祈った。

それでも彼はまた何もなかったように自分の前に現れるのだろう。そう考えたら気持ちが軽くなったのがわかった。お酒に酔って潰れた日、夢か現実かわからないが、自分の言葉の後に〈ちゃんと帰るから〉と言っていた彼。

(大丈夫なんだよね)

(零さんの誕生日もお祝いしなきゃ)