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「Aさんこちらにお願いします」
「こちらに視線お願い致します」
「こっちにも!」
制作した長編映画が、コンペに出したわけではないのになぜか飛躍的に話題になり
出演者とともに表舞台に出て欲しい、とそんな依頼が来た
出演者ほど前に出るわけに行かないと、控えめにシンプルなデザインの淡いブルーのドレスを身に纏って壇上に上がる
____フラッシュが眩しい、、
ん、と思わず目を瞑ると、隣にいた演者に笑われた
「慣れてないと光が不快ですよね(笑)」
「…ええ、まさかこんなことになるなんて、…」
「今日とても素敵ですよ。そして僕は、貴方の撮る映画に出られて光栄に思います」
柔らかな笑顔に私もほっとする
「Aさん!!こちらを向いてください!」
カメラマンの声にそちらに目を向け、そっと微笑む
「今回の作品はAが全て監修されたんですよね、キャスティングから、脚本から、撮影まで」
「ええ。脚本、という程ではありませんが、」
「普段ショートフィルムでしたけど、如何です?」
「…とても貴重な体験でした。」
「それにしても」
ぷつ、とそこでインタビュアーの声が切れる
「?」
「…ここに並ぶ演者に見劣りしないほどの美貌。今までどうして出てこられなかったんです、(笑)」
「っ、……」
びた、と体が固まる
「…そんな…っ…私はあくまで映像を撮るアーティストにすぎませんから…」
「いやぁ、とてつもなく美人さんだから、話題性にはなるでしょうに!」
その言葉にゆっくりお辞儀をすると、今度は別の記者が
「こんなに若くして美しく、まさに映像界の申し子!といった感じですが!」
「…恐縮です、、ほんとに、そんなことは、…」
「《天才》さんの生み出す映像!これからも楽しみです!」
その言葉にも、ゆっくりお辞儀をする
隣で演者が心配げにそんな私を見つめていた
「いやぁ、我が国にこんなに優秀で美しいアーティストがいるなんて…!誇りに思いますね!」
「……ありがとうございます…」
「これからの時代を担う逸材!《美しき天才児》さんの未来に期待してますよ!」
ぐらぐらと揺れ出す視界の中で、また静かにお辞儀をした
結局、映像に参加してくれた演者さんには殆ど目もくれず、私がフューチャーされて記事にもテレビにも放映された
ふらりとよろけると劇場スタッフさんが支えてくれて
____私はまた同じことを繰り返すのだろうか…
ほろ、と涙が溢れそうになった
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mila.(プロフ) - xts9cp5sUjUGJbjさん» 感想ありがとうございます。私も実はこの作品が気に入ってるんです笑 この作品を愛読してくださり、ありがとうございました! (2021年10月5日 17時) (レス) id: 1554483eb9 (このIDを非表示/違反報告)
xts9cp5sUjUGJbj(プロフ) - とても…とても綺麗なお話でした。作者様の言葉選びなどがとても魅力的で、物語に吸い込まれるようでした。とても素敵な作品に出会えて幸せです。これからも応援してます、 (2021年10月1日 2時) (レス) @page50 id: a176559be4 (このIDを非表示/違反報告)
mila.(プロフ) - ももさん» ももさん、嬉しいコメントありがとうございます。「素敵な時間」を提供できたとしたら本当によかったです。これからも一緒にバンタンを応援できたら嬉しいです (2021年9月5日 14時) (レス) id: 488172c492 (このIDを非表示/違反報告)
もも(プロフ) - 美しい文章、と素敵な時間をありがとうございます。 (2021年8月30日 12時) (レス) id: 7a7f3f1d7f (このIDを非表示/違反報告)
mila.(プロフ) - まる汰さん» まる汰さんコメントありがとうございます。書いてから随分経ってもなおこうして読んでもらえて嬉しいです。ジンくんの宝石箱、、美しい表現をありがとうございます。なんだか染み入ります(笑) (2021年6月28日 20時) (レス) id: 488172c492 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:mila. | 作成日時:2019年11月29日 12時