scene.88 ページ39
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ユンギside
ポロンポロン、とアップライトピアノに指を滑らすと、それに玉を取るリリ
ぺちぺちとあたる猫の手は正直邪魔だけど鬱陶しくはない、のは、Aさんの飼い猫だからなのか、と思ったらふっと笑みが漏れる
ゆっくり目を閉じながら
もはや感覚で弾けるようにもなった鍵盤
時たま当たるリリの手。
___〜〜♪
美しい旋律
どこまでも、真っ白な、澄んだメロディー
それでいて落ちつきというよりも、常に新しい世界へと前を向いている
そんな曲。
「わぁ。素敵な曲ね、」
「!」
「ふふ、リリ、邪魔しちゃダメでしょ〜…?」
ふわっとリリの体を持ち上げ抱きながら、俺の顔を覗き込んで微笑む
_____あー、綺麗だ、
どこまでも少女のような無垢さ。洗練された温もり。
Aさんって、本当に不思議な人だと思う
「新曲?」
「……いや。発表はしないけど」
「…お蔵入り?せっかく素敵な曲なのに…」
「いや。そうでもない」
「??」
鍵盤にそっと手を置いて、Aさんの目を見るとちょっとだけビックリしたように目を瞬かせた
「……Aさんってさ、こんな感じ。」
「え、…?」
「だから、捧げるとかそーいうことはしねーけど。俺のいつも触れてるAさんは、俺が表現したらこーなるから」
ふっと笑うと面食らったみたいな顔をした。
「カメラを通して、Aさんが俺たちをどう見てるかを知るように、Aさんは今弾いた俺の曲を聴いて自分がどう見られてるか知ってくんない?」
「…ユンギくん、自分が凄いこと言ってるのわかってる、?(笑)」
「まぁそれなりには(笑)」
「…“素敵な”曲なんて、言うんじゃなかった、(笑)」
「“素敵”に聴こえてたんなら、俺にはそう見えてるってことだな(笑)」
「……狡い、ほんと狡い、ユンギくんって」
ぽっと耳が赤くなって長い髪を耳にかける彼女を見て、くつくつを笑いを堪える
ああ、本当に素直。そんでやっぱ悔しいけどこーいうとこ、
「ね、もう1回聴きたい。」
にこっと微笑まれると断れるわけなんてなくて
「ん。」
「お願いします」
「え、そこから見んの?」
結構な近さで真横から
「緊張すんだけど…」
「ここからが1番綺麗に見えるんだもん、」
そんな顔されて断れないのだから狡いのはどっちだ
「Aさんのが数億倍狡いな(笑)」
にゃぉん、とリリが鳴く。だよな、Aさんのが狡いよな(笑)
そう笑って俺はもう一度曲を奏でた
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mila.(プロフ) - xts9cp5sUjUGJbjさん» 感想ありがとうございます。私も実はこの作品が気に入ってるんです笑 この作品を愛読してくださり、ありがとうございました! (2021年10月5日 17時) (レス) id: 1554483eb9 (このIDを非表示/違反報告)
xts9cp5sUjUGJbj(プロフ) - とても…とても綺麗なお話でした。作者様の言葉選びなどがとても魅力的で、物語に吸い込まれるようでした。とても素敵な作品に出会えて幸せです。これからも応援してます、 (2021年10月1日 2時) (レス) @page50 id: a176559be4 (このIDを非表示/違反報告)
mila.(プロフ) - ももさん» ももさん、嬉しいコメントありがとうございます。「素敵な時間」を提供できたとしたら本当によかったです。これからも一緒にバンタンを応援できたら嬉しいです (2021年9月5日 14時) (レス) id: 488172c492 (このIDを非表示/違反報告)
もも(プロフ) - 美しい文章、と素敵な時間をありがとうございます。 (2021年8月30日 12時) (レス) id: 7a7f3f1d7f (このIDを非表示/違反報告)
mila.(プロフ) - まる汰さん» まる汰さんコメントありがとうございます。書いてから随分経ってもなおこうして読んでもらえて嬉しいです。ジンくんの宝石箱、、美しい表現をありがとうございます。なんだか染み入ります(笑) (2021年6月28日 20時) (レス) id: 488172c492 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:mila. | 作成日時:2019年11月29日 12時