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ソクジンside
Aが教授と折り合いが悪いのは、なんとなく気がついていた
というより彼女は作品づくりが好きな子だから、成績や評価至上主義のこの国は、どうにも合わないんだと思う
実際、僕も兄はよく勉強もできて。自慢の息子だと母親に思って欲しかったんだけど、どうにもうまくいかなかったから…
そんな中Big hitさんに声をかけていただいて事務所に所属することとなった。でもAには言えてなくて、いつ言おうか、って
「ああー、どうしよう。幻滅されたら…っ!」
俳優になるって言っちゃったし、うう、と頭を抱えていた時だった。
廊下を虚な目で歩くAが遠くに見えて、そのまま目で追っていくと傘も刺さずに外に出た
「えっ!!ちょ!」
研究室に常備されているブランケットと傘を引っ掴んで飛び出すと、彼女の姿を探した
「どこに…!」
ああ、そうだ多分…!あの百合の花が咲いている裏庭のベンチ…!
駆け寄るとずぶ濡れになって目を閉じ、空を仰いでいるAがいて
「!」
_____き、綺麗だ……
不謹慎にもハッと口を噤んで立ち尽くす。
美しい横顔に、しとしと当たる雨粒。近づいてはいけないような、神秘的な空気感。
「っ、いやいや、!」
風邪引くから!
駆け寄って傘を彼女に差すと、気配にパッと目を開けて
「A…っ」
泣いていた。
「ソクジンくん…っ」
「…。」
僕は無言で彼女の濡れた体にブランケットを羽織らせ、湿りつくした茶封筒を手にとった。
濡れたベンチに僕も座る。ただ無言。雨が傘に当たる音だけが、二人の間に流れた
「…優しいね。ソクジンくん、」
ポツ、と語り出す
「何も言わないでいてくれるんだね」
「僕がいい男じゃないから…気の利いたこと一つも言えないだけだよ、(笑)」
「ううん。ソクジンくんは、誰よりも温かくて、優しい人。」
こんな私に、初めて友達になってくれたんだもん、と寂しげに笑う
「…僕はAがカメラを覗いてる時が一番好きなんだ。出来上がった作品もだけど。それよりもずっと。」
「…え」
「誰よりも、何よりも、楽しんでるんだなって。凄く、凄く幸せそうに見えるし、」
「…っ」
「僕は、それが“答え”だと思うよ。」
「!」
手の中にある濡れた茶封筒を強く握りしめると、Aがふっと微笑んで
「…それ。もう私には必要ないね、(笑)」
そう言ってビリビリと引き裂いて
「私。私が撮りたいものを撮りたい。」
そう言って僕に微笑んだ
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mila.(プロフ) - xts9cp5sUjUGJbjさん» 感想ありがとうございます。私も実はこの作品が気に入ってるんです笑 この作品を愛読してくださり、ありがとうございました! (2021年10月5日 17時) (レス) id: 1554483eb9 (このIDを非表示/違反報告)
xts9cp5sUjUGJbj(プロフ) - とても…とても綺麗なお話でした。作者様の言葉選びなどがとても魅力的で、物語に吸い込まれるようでした。とても素敵な作品に出会えて幸せです。これからも応援してます、 (2021年10月1日 2時) (レス) @page50 id: a176559be4 (このIDを非表示/違反報告)
mila.(プロフ) - ももさん» ももさん、嬉しいコメントありがとうございます。「素敵な時間」を提供できたとしたら本当によかったです。これからも一緒にバンタンを応援できたら嬉しいです (2021年9月5日 14時) (レス) id: 488172c492 (このIDを非表示/違反報告)
もも(プロフ) - 美しい文章、と素敵な時間をありがとうございます。 (2021年8月30日 12時) (レス) id: 7a7f3f1d7f (このIDを非表示/違反報告)
mila.(プロフ) - まる汰さん» まる汰さんコメントありがとうございます。書いてから随分経ってもなおこうして読んでもらえて嬉しいです。ジンくんの宝石箱、、美しい表現をありがとうございます。なんだか染み入ります(笑) (2021年6月28日 20時) (レス) id: 488172c492 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:mila. | 作成日時:2019年11月29日 12時