優しく撫でて・・・ ページ39
「きゃあ・・」
私が声を出したのと
トモくんが私の腕を掴んだのがほぼ同時だった。
私はそのまま防波堤の上にいる彼の胸へ倒れ込んだ。
「Aさん危なかった〜もう少しで海に落ちるところだったよ」
「・・・・・」
「Aさんを助けたご褒美。またご褒美貯金に積み立てるぞ」
おどけていう彼の言葉が意地を張って
張りつめた心に‥しみた‥
ふいに涙が溢れて‥
彼の手の甲にこぼれ落ちた。
「Aさん‥」
トモくんは‥顔をあげられない私をそっと・・・ハグしてくれた。
「ごめんなさい‥」
それだけ言うのが精一杯だった・・・
「ってか・・・俺がテトラポッドなんかに渡らなければ
こんな事にはならなかったんだし・・・俺こそ・・・ごめんなさい・・・」
「トモくんのせいじゃないの・・・私が・・・」
そのあとは言葉にならなかった。
彼の腕に力が込められ
さっきよりもギュッと抱きしめられた。
そして彼はただ黙って私の髪を
よしよし‥というふうに優しく撫でてくれた。
頬にあたる冷たい雫に顔をあげると
さっきまで薄いグレーだった空が濃いグレーへと変わり
ポツポツとみぞれ混じりの雨が降ってきた。
「Aさん・・走れる?」
私は黙って頷いた。
トモくんは私の手を握ったまま走り出した。
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作者名:Luna | 作成日時:2014年2月23日 11時