非番はずっと恋模様

　26-2．特別 ページ49

SIDE：志摩


「かずくんっ」


朝、家を出ようとすると泊まりに来ていた彼女に呼び止められた。


「ん？」

「これ、勤務中に食べて」

「…袋が2つなのはなぜだ？」

差し出されたのは赤と青の袋。

「あ、こっちは伊吹さんの分。この前のお礼」

「…分かった。いってきます」

伊吹の分は正直いらない、と思いながらも彼女の善意を無駄にすることはできないので何も言わず、渋々家を出た。


すると、


「あっ！かずくん！」


少し歩いたところでドアが開いた音がして、


「ん？」

と振り向くと、


「二人で一緒に食べてね！」


ドアから顔を出した彼女に謎の指示をされた。


「は？何で？」

「いいからいいから！それまで袋、開けないでね！」

「…了解」

30代男性が二人仲良く何かを食べる姿を想像しながら頷くと、


「いいことあるよー！」


彼女は満面の笑みで手を振っていた。


そんな朝のやり取りを思い出していると、


「あー、志摩ニヤついてるー」


隣から伊吹のからかう声がした。


「べ、別にニヤついてない」

「ねぇ、そっち何味？」

「抹茶だな」

伊吹の質問に、彼女がくれた緑色のメロンパンを見ながら答える。

「えー！一口ちょうだい？」

「嫌だ。お前はオーソドックスなプレーンを平凡に食え」

「うわっ！すっげぇ嫌味！」

ギャンギャン吠える伊吹のメロンパンと自分のメロンパンを見ながら、


「これは、俺のだ」


優越感に浸りながらまた一口かじりついた。

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