非番はずっと恋模様

　16-2．あるのです ページ27

でも、


「…なんで盗ったの」


始めてしまう俺も俺か。


「…盗るつもりはなかったんです」

「盗るつもりなかったって言ってるけど、実際やってるよね？」

…元捜査一課なのに万引き犯の取り調べって。

「…すみません」

「他には？盗ったもの」

「…」

犯人役に徹しているのか向かい合った彼女は俯いている。

「防犯カメラ。見たらすぐ分かるよ」

「…これ」

彼女がないはずのカバンからないはずの何かを目の前に差し出してきた。

「何これ」

「…メロンパン４つ盗りました」

「これで全部？」

「…はい。すみませんでした」

笑いそうになったのをこらえ、引き続き取り調べる。何なんだ、メロンパン4個って。

「じゃあもういいよ。帰って」

「刑事さん」

「なに」

「…カツ丼、食べたいです」

「あるけど自腹だ」

「えっ？！そうなのっ？！」

俺の言葉に素に戻って驚く彼女。

「当たり前だろ。警察はそこまで面倒見切れない。はい、終わり」

「え、ど、どうだった？犯人役は？」

強制終了すると、彼女が感想を求めてきた。

「どうって…落としやすい犯人だった。素直で、なんでもほいほい答えるから」

「あー、そうかも」

「お前は？どうだった？」

「えー？んふふー」

「…何だニヤニヤして」

俺の方を見ながら嬉しそうに笑っている彼女に尋ねると、


「だってかっこよかったんだもん。お仕事中のかずくんって感じで」


そう言ってまた、んふふっと可愛く笑うのだった。


…逮捕しちゃうぞっていう言葉はたぶん、こういう時に使うんだろうな。
 

17．絶不調だけど絶好調→←16-1．お願いが

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す