9-1.ああ、 ページ12
<リクエスト作品>
おかしい。
さっきから、彼女の様子がどうもおかしい。
いつもなら話し掛けたらまるで餌をもらった子犬のような目を向けるのに、今日はテレビを見たままこちらを見向きもしない。
今だって二人とも風呂から上がってソファに並んで座っているというのに、特に会話もない。
「A、眠いのか?」
とりあえずそう尋ねてみた。付き合い始めて分かったのだが、彼女は眠くなるとぐずる傾向にあった。
でも、
「…ねむくない」
彼女はまたテレビを見たまま答えた。
あ、イライラする。
「さっきから何なんだ」
そう思った時には、時すでに遅し。そんな言葉が口をついて出てしまって、テレビの電源を切ってしまった。
「…何すんの」
「言いたいことがあるなら言え。言ってくれないと分からない。分かりようも、直しようもない」
ようやくこちらを見たAに俺は言いたいことを言った。
「…んじゃん」
「は?」
俯いて何か言ったが聞き取れず、聞き返すと、
「…かずくんが悪いんじゃん」
今度ははっきりそう言った。
「だからそれを言え。俺お前に何かしたか?」
「ゆたかくんと楽しく遊んできたんでしょ」
「…それが何だ、お前にも言っただろ。隊長の家に修理の立ち会いに行くって」
泣きそうな彼女を見るのは嫌だけど、ここは俺も譲れない。
それにその話をした時、彼女は快く受け入れてくれていた。後からそれは嫌だったというのはルール違反だ。
でも、
「…桔梗さんとも楽しくお話したんでしょ」
その一言で何だか色んなことが分かった気がした。
「…ライン、きてた。『ゆたかがパパになってほしいって聞かないんだけど』って」
…ああ、そういうことか。
「…バカかお前は」
耐えきれなくなって泣いてしまった彼女が愛おしくて愛おしくて抱き寄せた。
「…バカじゃないもん。バカはかずくんだもん」
「…分かった分かった。俺がバカでいい」
「…別にこんな子どもみたいなワガママ言う彼女、嫌いになってもいいから」
「…嫌いになんてならない。なれない」
腕の中で身をよじる彼女を逃さないように、抱きしめていた腕に力を入れる。
「A、俺はゆたかの父親になるつもりも、隊長の旦那になるつもりもない」
「…なるもん」
「何でそう言い切れるんだ」
俺がそう言い張っても、彼女は頑なに認めようとしない。
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結城(プロフ) - 伊吹さんの方からやってきましたがやっぱりため息でますー(//∇//)たまたま早起きして読んでいたのですがにやにやとため息でバッチリ目が覚めました!ありがとうございます^ ^ (2020年9月4日 5時) (レス) id: 3f7c57052f (このIDを非表示/違反報告)
MAYU(プロフ) - ありがとうございます。楽しみにしてます(*^^) (2020年8月28日 1時) (レス) id: 68cb4525c6 (このIDを非表示/違反報告)
リトルバード(プロフ) - MAYUさん» MAYUさん!初コメント&リクエストありがとうございます!今書いていますのでもう少々お待ちいただけると嬉しいです! (2020年8月27日 23時) (レス) id: fd0b490cca (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃 - 志摩さんリクエスト。恋人夢主。志摩がお世話になってるからと紅茶のシフォンケーキを焼いて4機捜に差し入れしに行く話し。上司である桔梗にはゆたか君達と食べる用に別に用意。夢主のケーキに癒される志摩さんの話しお願いします。 (2020年8月25日 14時) (レス) id: 9070337cc8 (このIDを非表示/違反報告)
こな(プロフ) - リクエストです!ナイトプールで事件発生。404が現着。ヒロインに遭遇。水着ガン見。伊吹にぶちギレ志磨さん。伊吹に言わせたいのが、ヒロインちゃん、おっきいのね。ってな感じです。笑 (2020年8月24日 12時) (レス) id: 3a7ce308f1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:リトルバード | 作成日時:2020年8月5日 0時