非番はずっと恋模様

2．絶対うるさくなるやつ ページ2

「あ」


分駐に出勤して、カバンを開けた瞬間、思わず声が出た。


「ん？どしたの志摩ー？」

「…いや、何でもない」

「いやいやいやいや。典型的な何でもある顔じゃん、それ」

俺としたことが。伊吹が近くにいることを忘れていた。

「…USBを忘れた」

「え、報告資料の？」

「…ああ」

「まずくないそれ？今日提出っしょ？」

お前に言われたくないわ！と思いつつも、何も言い返せず。


すると


「志摩さん」


ドアの方から九重が俺を呼んでいた。


「すまない、後にしてくれ」

「そうなの。志摩ね、ピンチなの今」

「嬉しそうだな」

眉間に人差し指を当てながら考えていると、伊吹が肩を組んできた。


しかし


「ではお客さん、返しましょうか？」


九重の言葉にカバンを漁っていた手が止まる。


「…お客さん？」

「ん？志摩に？お客さん？」

「ええ、さっき署で会って、志摩さんを探してるって。若い女性の方です」

驚く俺と伊吹に、九重がこちらを見ながら話す。


待て。


「…若い女性…？」


何だか非常に嫌な予感が…。


「若い女性っ？！志摩にっ？！え！見たい見たい！」

「お、おいっ！！」

「ちょ、伊吹さんっ」

遊び道具を見つけた犬みたいにドアの方へ走り出す伊吹に向かって叫ぶ俺と九重。


「うわー！はじめまして！俺、伊吹っていいます！」


伊吹の一段と明るい声がする。


ああ、これ、嫌な予感当たるな、なんて思いながら外に出ると、


「は、はじめ…あ、かずくん」


ほら、当たった。そこには伊吹に引き気味なAの姿。


「「…かず、くん？」」


顔を見合わせる伊吹と九重。


これ絶対うるさくなるやつだな。

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