人魚の恋(兄者) ページ46
ーーー言葉は泡となって消え去ってーーー
「愛してる、A」
貴方が私に愛を囁く度、私の言葉は声と共に失われる。羞恥や喜悦からでなく、いつか来る貴方との“サヨウナラ”が頭を過ぎり声が掻き消される。そんな不安など幸せの上から成り立つ戯れ言にすぎないと人は言うだろう。それでも私の唇からは愛の言葉は紡がれない。
「好きだ」
私もよ
「愛してるんだ」
私も愛してる
「Aは俺の事どう想ってるんだ?」
声にならない私の声が届く筈もなく、不安な眼差しで私を見つめる貴方に私は静かに微笑み返す。叶わぬ恋だと思っていたのに、神様の悪戯で思いがけず叶ってしまった恋。断れば良いものをほんの少しの間だけ貴方の傍に居たいと、不覚にも望んでしまった。
私には勿体無さ過ぎるくらい
貴方の愛は優しくて
思わずその愛に応えたくなる
でも応えたその先に待つのは、今よりも鋭い棘の茨の道
上手く避けて歩けない私の両脚は血だらけで
傷付いた脚では貴方と共に歩めない
“サヨウナラ”のその時に、泣かないように、恋い焦がれてしまわぬように、私は愛の言葉を紡がない。まるで呪いだとさえ思うこの戒めはきっと一生解かれる事はないだろう。泡沫の恋だと知っていてもせめて貴方の前では笑っていたい。幸せそうな夢にナイフを突き立てて、泣き叫びたい気持ちを心に深く沈め、私は微笑み続ける。
もう少しだけ、あと少しだけで良いから・・・どうか貴方の傍に居させて
【END】
221人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
アルバ - コメント有難うございます!殆ど自己満足みたいな文章で申し訳ない感じですが、そう言って頂けると嬉しいです!また温かいお言葉有難うございます( ´ ▽ ` )毎日猛暑ですが、ななしのゴンベイさんもお体に気を付けて下さいませ。 (2018年7月18日 23時) (レス) id: 5ec2af47b2 (このIDを非表示/違反報告)
ななしのゴンベイ(プロフ) - 確りとした世界観と、読みごたえある文章に惚れ込みました。日々の癒しとして、これからも愛読させていただきます。日差しが厳しくなって参りましたが、お体には気をつけて執筆活動を楽しんでください。 (2018年7月18日 5時) (レス) id: 5d365d193a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:アルバ | 作成日時:2018年6月19日 12時