恋薬2(弟者) ページ27
「・・・ですね」
「馬鹿は・・・ないのに・・・でしょう?」
少し離れた所で誰かが話している気がするが、熱に侵された身体のだるさから意識が波の様に近付いたり遠退いたりして、起きることも目を開けることも出来ない。
「ちょっとごめんね」
聞き覚えのある優しい声色が近付いたのと共にとんとんと肩を優しく叩かれた。そして枕から頭を持ち上げられ、また直ぐに元の位置へと戻された。冷んやりとした感覚が後頭部にじんわりと広がり、そして額にも冷たい物が当てられ発熱した身体を冷やしていく。その後再び会話のやり取りが続き、誰かが部屋の外へと出て行った。てっきり全員出て行ったと思ったのだが不意に誰かがそっと俺の頬に片手を添えた。少し小さな手からずっと好きなあの子の香りがし、また手から頬へと伝わる優しい温もりが熱とはまた違う熱を伝え、弱った身体に安心感を与えてくれた。
身体が弱ると
無性に温もりが恋しくなって
出来る事ならば
この頬の温もりが夢でなければと
願い、想うんだ
和らいだ熱から薄っすらと開けた瞳に、心配そうに俺の事を覗く彼女が見えた。
「弟者?」
夢と現を行き交う意識の中、彼女の姿と声を確認して嗚呼、良かったと俺は呟いた。
「何が・・・きゃっ!?」
戸惑う彼女に俺は手を伸ばし、彼女の肩に両手を回してそのまま自身の身体へと抱き寄せた。彼女の香りと温もりがこれが現実である事を俺に示し、嬉しさから思わず彼女の身体を抱き締めた。
「お、弟者?!何してっ!?」
「A、さっき俺に触ってただろ?」
俺の腕の中で慌てもがく彼女に確かめる様に呟いてみた。俺の言葉に彼女は動きを止め、彼女の体温と鼓動がみるみる上昇する。
「ま、まさか起きてたの?!あ、あれは、その、熱を確かめててっ・・・!」
「良いんだ、A。ただ、今はこうさせて・・・」
そう呟いた俺の言葉に彼女は身体を強張らせつつもゆっくりと俺の身体に身を預けてくれた。彼女の温もりが心地良くて愛おしく、不安だった心を落ち着かせてくれる。相変わらず彼女の鼓動は速くこの位置からでは見えないが、俺の腕の中でどんな顔をしているのだろうか。でも今はこの温もりを手放したくないから、抱き締める腕を強め彼女の髪に顔を埋めた。
次に目が覚めたら
ずっと秘めていた想いを伝えよう
君が好きなんだ
【END】
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アルバ - コメント有難うございます!殆ど自己満足みたいな文章で申し訳ない感じですが、そう言って頂けると嬉しいです!また温かいお言葉有難うございます( ´ ▽ ` )毎日猛暑ですが、ななしのゴンベイさんもお体に気を付けて下さいませ。 (2018年7月18日 23時) (レス) id: 5ec2af47b2 (このIDを非表示/違反報告)
ななしのゴンベイ(プロフ) - 確りとした世界観と、読みごたえある文章に惚れ込みました。日々の癒しとして、これからも愛読させていただきます。日差しが厳しくなって参りましたが、お体には気をつけて執筆活動を楽しんでください。 (2018年7月18日 5時) (レス) id: 5d365d193a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:アルバ | 作成日時:2018年6月19日 12時