幸福論(弟者) ページ2
ーーーどうか神様、叶うのならばこの時をいつまでもーーー
「おーとーじゃー君っ」
全体的に伸びた口調で彼女はベッドの上で胡座をかきながらゲームをする俺の背中に突如のしかかって来た。
「ぐぇっ」
ワザとらしく潰れたような声を出したら嘘つけーと笑いながら言われてしまった。勿論俺より華奢な体の彼女がのしかかってきても重いわけが無い。寧ろ恥ずかしがり屋な彼女からのアピールは凄く嬉しい。
「どうしたーA?」
普段俺がゲームをしている時は大人しく俺の傍でテレビ画面を見ているか、自分の好きな本を読んで過ごしている彼女だがゲーム中に絡んでくるのは珍しい。俺はゲームのコントローラを置いて背中にのしかかったままの彼女に声を掛けてみた。幸い実況中でもオンライン中でも無いので放置してもプレイに影響はない。
「んー、大した意味は無いかな」
そう言う彼女だが俺から離れる気配も無く、後ろから俺の首元に顔を埋めている。首元にかかる彼女の吐息と背中に伝わる熱、そしてほんのり香る彼女自身の匂いにくすぐったいような何とももどかしい感情が俺の中に渦巻く。
「・・・なんか嫌な事でもあった?」
そんな感情を頭の端へと押しやり俺は前を向いたまま言葉を紡ぐ。首元に顔を埋められて居るため彼女がどんな表情をしているか分からないが何となく気になる。んー?と言う相槌をし、しばらく黙った後に彼女は呟くように言った。
「強いて言うなら充電中ー」
なんじゃそりゃ?と首を傾げる俺を他所に抱きついたまま彼女は再び黙ってしまった。在宅ワークの様な俺とは違い、会社と言う名の組織に属して働く彼女。仕事の日は忙しく帰る時間もバラバラ。休日にはこうして遊びに来てくれるが色々とストレスが堪っているんだろう。彼女の中で何かの葛藤の末かと勝手な推測は多分大きく外れてはいないだろう。そう思うと身勝手かも知れないがこうして俺に甘えて来てくれる彼女の仕草が凄く可愛い。もう一度言う、凄く可愛い。
「なぁ」
ニヤけたい気持ちを必死に抑えながら俺は背中の彼女に声を掛ける。
「俺も充電したいんだけど?」
【NEXT】
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アルバ - コメント有難うございます!殆ど自己満足みたいな文章で申し訳ない感じですが、そう言って頂けると嬉しいです!また温かいお言葉有難うございます( ´ ▽ ` )毎日猛暑ですが、ななしのゴンベイさんもお体に気を付けて下さいませ。 (2018年7月18日 23時) (レス) id: 5ec2af47b2 (このIDを非表示/違反報告)
ななしのゴンベイ(プロフ) - 確りとした世界観と、読みごたえある文章に惚れ込みました。日々の癒しとして、これからも愛読させていただきます。日差しが厳しくなって参りましたが、お体には気をつけて執筆活動を楽しんでください。 (2018年7月18日 5時) (レス) id: 5d365d193a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:アルバ | 作成日時:2018年6月19日 12時