雨音(兄者) ページ1
ーーーいつまでも、貴方の側に居させてねーーー
小さな雨音が聴こえて、ふと目が覚める。仄暗い部屋に少し隙間が開いたカーテンから夜の光が射す。上半身だけ起こし、その隙間から外を覗くと静かに降り注ぐ雨が窓を濡らしていた。ベッドサイドに置かれた時計に目をやれば時刻は夜中の3時を回ったところだった。変なタイミングで起きてしまったと溜息交じりに一息ついて横を見れば、規則正しい寝息を立てて眠る彼がいる。何となく気持ちよさそうに寝ている彼の頭に手を乗せ、男性にしては少し長めの青髪を指先に絡ませながら撫でてみた。
昔から、雨が嫌いだった
冷たく降る雨が私を憂鬱にさせる
この今手にある筈の温もりが
冷たい雨と共に消えてしまいそうで・・・
「ーーーん」
小さな声と共に身を捩り彼が静かに目を開けた。思わず撫でていた手を止めて彼の紺碧の瞳を覗き込む。
「ごめん、起こしちゃった?」
「・・・眠れねぇのか?」
寝惚け眼で問う彼に私は慌てて首を振りながら短く答えた。
「雨音で起きちゃっただけ、大丈夫よ」
「・・・そうか」
そう言って彼は私のはだけた服の首元に手をやり私の頬を静かに撫でた。大きくて温かな手が冷えた私の頬に熱を移す。
「冷えてるじゃねぇか」
「ほんのちょっとだけだっ・・・わっ!」
ぶっきらぼうにそう呟いてから彼は私の腕を引っ張って自分の腕の中へと私を納めた。彼の匂いと温もりが私の身を包み、何処か張り詰めていた糸が解れる気がした。そんな私の心境の変化を読み取る様に彼は優しく私の頭を撫で始めた。
「ねぇ、兄者」
抱きしめられたままそっと彼の名を呼んでみた。
「・・・あ?」
気怠い口調だが撫でる手は止めずに私の声に応えてくれる彼。
「傍に居てくれて有難う・・・大好きよ」
彼の胸に顔を埋めながら呟くように言葉を口にしてみた。そんな私に彼は鼻で笑いながら強く私を抱きしめ直した。
「・・・ずっと傍に居てやるよA。愛してる」
そう言って彼は私の額にキスをした。
外ではまだ雨が降り注いでいる
静寂に包まれたこの部屋で
お互いの温もりを感じながら
私達は静かに眠りにつく
【END】
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アルバ - コメント有難うございます!殆ど自己満足みたいな文章で申し訳ない感じですが、そう言って頂けると嬉しいです!また温かいお言葉有難うございます( ´ ▽ ` )毎日猛暑ですが、ななしのゴンベイさんもお体に気を付けて下さいませ。 (2018年7月18日 23時) (レス) id: 5ec2af47b2 (このIDを非表示/違反報告)
ななしのゴンベイ(プロフ) - 確りとした世界観と、読みごたえある文章に惚れ込みました。日々の癒しとして、これからも愛読させていただきます。日差しが厳しくなって参りましたが、お体には気をつけて執筆活動を楽しんでください。 (2018年7月18日 5時) (レス) id: 5d365d193a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:アルバ | 作成日時:2018年6月19日 12時