シリアス/非現実/視点変アリ ページ7
----会いたい。
ただその思いだけで鉛のように重い体を動かした。
額から汗が頬を伝い、強打したように痛む腕を振り、
動くことを拒む両足を意地を根性で動かし、必死に走る。
誰に会いたいのか覚えていないし、行くべき場所も曖昧だ。
記憶が一部飛んでしまったのかもしれない。
その一部にこの全身が痛む理由が含まれていたのだろう。
脳にダメージが与えられたからか、
せわしなく酸素を循環させるのに頭もはっきりしてこない。
視界はまだ良好。
しかし、判断力が鈍っているのかもしれない。
歩きたいと嘆く足を叱責して走り、肩で呼吸をする。
スピードが出ないのは仕方ないことだろう。
その仕方ないことにすら悔しさを覚え、涙がでそうになる。
「畜生ッ…」
今、ここで倒れればどれ程楽か。
でも、今止めればきっと会いたい人には会えなくなるだろう。
なら走るしかない。進むしかない。
相手を覚えていなくとも。行き先が分からなくとも。
なんとなく、こっち。
多分あっちだった。
そんな曖昧でバカげた感覚を頼りに進む。
思い出の場所なのかもしれない。
行っては行けない場所かもしれない。
でも行きたい。行かなきゃいけない。
相手だって、
好きな人なのかもしれない。
嫌いな人かもしれない。
もしかしたら家族かもしれない。
会うべきではない相手かもしれない。
でも会いたい。会わなきゃいけない。
相反する感情が思考を掻き回し、乱す。
それでも足を動かすのを止めない。
それが自身の意思なのか、なんてことすら覚えてないのに。
side/Another
「向かうは××××。
行方不明なアイツを見つけに。
期限は今日。24時間ジャスト。
それを超えてしまえば、もうどうする事もできない。
吉と出るか、凶と出るか、それを見守るしか術はないんだ」
しかし、もう時間だ。
契約を交わしたコイツは、もう無理だろう。
そう嘲笑を零す。
己の頬から伝ったモノが相手の頬に落ちた。
__捜索届けは意味を成さず
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作者名:秋花火 | 作成日時:2015年12月3日 20時