【オリジナル】気紛れ投稿【ＳＳ集】 (ページ6)

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♂/ﾀﾋネタ/姉弟ページ6

「連絡するからね」

実姉との最後の会話になった。

親の離婚により、俺と姉は離れることに。

周囲からも「仲が良い」と称されるほど仲良しだった。
勿論、俺は姉をとても慕っていたし、姉もそれを甘受するくらい。

「姉さん」

涙で視界が歪み、顔が熱くなる。
視線を下に向ければ、姉が俺の両頬を優しく手で包む。
少し冷たい手袋をしていない手の上から俺の手を重ねた。

俺の好きな姉の手。
女性ならではのまるく、柔らかい手。
心配性な姉の、あまりキズの無い綺麗な手。
あかぎれが目立つけど、気にならない。

「私が自立したら遊びにおいで？あの人たちには内緒で、ね」

父さんも母さんも俺達の逢瀬を邪魔するだろう。
姉弟の逢瀬くらい大目に見てくればいいものを。

俺は肯定するように何度も頷く。

その勢いで涙が流れた。
必死に咽(えつ)を堪えるが、涙は止まらない。
笑顔で送りたかったのになー。

見れば、姉も顔を歪めていた。

「ふっ…化粧取れて、ぶっさいく」

「今日は化粧してないっての！」

毎日やっていたこんなやり取りももう出来ないんだ。

駅にコールが響く。

「連絡、するね」

「うん。"いってらっしゃい"」

「…っ！"いってきます"」

涙ではっきりしない視界の中で、姉の笑顔だけが綺麗に映った。

相手も涙でお世辞にも『綺麗』とは言えない。
でも、今まで見てきたなかで一番輝いて見えた。

電車は姉を乗せ去っていった。

一人だけの帰路で、堪えていた本音が漏れる。
そのまま消え去ればよかった本音。
姉を困らせまい、と隠した本音。
小さな自分への反抗で口にした"いってらっしゃい"。

困らせてごめんね、姉さん。
でも、ねら、もっと困らせればよかったかも知れない。

俺は嗚咽と共に本音を放った。

＿＿＿＿＿＿＿いかないで

翌日、俺は父に×された。

＿＿「さよなら」は言わないから。