♀/not恋愛/タコ ページ23
────カえりタイ
何年ぶりだろうか。
そう思うほど来ていなかった水族館。
最後の記憶は小学生だっただろうか。
なかなかに古い。
「ここの展示、変わってないんだ」
つい最近、
やっと自分だけの自動車を持てたのでガソリン代を気にしつつだが、
色んな場所へ行く予定を立てたうちの一つに水族館があった。
地元にあり、そこそこ近く、最近行ってない、
の3つが揃ったためひとりで観覧に乗じた。
「懐かしい…あ、種類増えてる?」
自由気ままに巡回路に入れるのも日時的に人のいない時間だからである。ひとり最高。
水族館によって展示方法、展示順が変わる。
この水族館は最後の方にクラゲやタコのブースを置いている。
そして昔から何故かタコのブースに惹かれる。
タコに魅力があるか、と言われれば「NO」だし、
むしろ触るのも食べるのも苦手というレベルなのだ。
それでもタコのブースには必ず立ち止まって、
長居してしまう。なんでだろうか。
「へぇ、この水タコ5年も生きてるんだ」
────カエして
「え?」
濁った声が聞こえた。
その声は人ではないとそう感じた。
────カえりタいノ
また。
まるで水の中で発せられたような、
声と称するには音に近い声が響く。
周りには誰もいない。
いるのはわたしと水槽越しで目の前にいるタコ。
「誰…?」
────キこえルの
直感的に“彼”だと思った。
────コこかラ
─出シテ!!!!!
わたしは思わず水槽に手をついた。
────水タコは帰りたい
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作者名:秋花火 | 作成日時:2015年12月3日 20時